ロシア飢饉 (1921年-1922年)

概要

1921年から1922年にかけてロシアで発生した大飢饉は、十月革命や内戦、さらには旱魃といった幅広い要因が重なり、一部の地域においては非常に深刻な飢きんとなりました。この飢饉の規模についてはさまざまな見解が存在し、一部では数百万人が命を落としたとの推計があります。この事態を受けて、ソヴィエト政権は1921年に「新経済政策」（ネップ）を導入し、食糧生産の回復に向けてのアプローチを模索しました。ネップの効果により、1925年には生産量が戦前の水準にまで回復しましたが、この飢饉についての評価や研究は、長らく過小評価されてきた側面も多いのです。

背景

ロシアの自然環境は厳しく、特に農業においては不利な地域が多いことで知られています。高緯度地帯に広がる国土の大部分が、北方性の農産物が主体であることから、気候変動に敏感で、亡命に繋がる事例も少なくありません。加えて、旱魃の影響を受けやすい地域が多いことも、食糧生産の安定性を脅かす要因として挙げられます。

人災としての側面

1914年から続いた第一次世界大戦によって、ロシアは莫大な人的資源を失いました。戦争の影響で交通網が麻痺し、食糧供給の途絶は深刻でした。続く十月革命や内戦では、政権を奪取したボリシェヴィキの政策が農村に混乱をもたらしました。政府は、食糧独占政策を進め、都市への食糧供給を優先する中で、農村の餓死者を増やし、その結果、農民たちの不満も広がっていきました。

食糧独裁の開始

1918年には、ロシア共産党が食糧独裁を発表し、武装した徴発隊を農村に派遣して余剰食糧を収集しました。この対策は農民の怒りを買い、様々な反乱を引き起こす結果となりました。特にタンボフ県では、徴発に対する反発が形成され、多くの反乱が発生しました。徴発政策に対する抵抗が、内戦の一環として展開され、困窮が進んでいきました。

1921年、飢饉到来

1921年、旱魃がさらに悪化し、農作物は前年の20分の1とまで落ち込んでしまいました。農村では人々が飢えに苦しみ、死者も続出しました。この時期、ロシア共産党は新経済政策を導入し、食糧徴発の強制から市場経済に一部シフトしました。しかし、認知の開始は遅れ、飢饉に対する適切な対策が講じられることはありませんでした。

外国の救援活動

1921年には、アメリカ救済局などの国際機関がロシアに対して支援を行うこととなりますが、政府はこの救援活動を警戒し続けていました。特に、共産党指導部は、救済活動が農民を奴隷化するものであるとするプロパガンダを行う一方で、実際には多くの人々の命を救ったことは理解されていなかったのです。

飢饉の影響と復興

飢饉の結果、数百万人の人々が餓死し、農村は壊滅状態に陥りました。教育や保育施設も失われ、浮浪児が急増。経済の回復が待たれる中、1922年には収穫が戻ってきたことも相まって、少しずつ見通しが立つようになりました。ただ、当時の政府は、その原因を他者に求めることで自己正当化を図っていました。

このように、1921年から1922年にかけてのロシア飢饉は、自然災害と人為的要因が重なり合った結果、深刻な影響をもたらしました。既存の制度や政策が導入される中で、国家の危機を乗り越える努力が続けられたものの、その背後には多くの悲劇が潜んでいました。

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