ロジャー・トーニー

ロジャー・ブルック・トーニーの生涯と業績

ロジャー・ブルーク・トーニー（Roger Brooke Taney, 1777年5月17日 - 1864年10月12日）は、アメリカの政治と法の歴史において重要な役割を果たした人物です。彼は最高裁判所長官をはじめとする多くの重要な役職を務め、その影響は現在に至るまで及んでいます。

青年時代

トーニーは1777年にメリーランド州カルバート郡の裕福なカトリック教徒の家庭に生まれました。彼は次男という立場から、家業である農園を継ぐことはできず、法律の道を選びました。ディッキンソン大学を首席で卒業し、メリーランド州アナポリスで法律を学ぶことで、法律家としての基礎を築きました。1806年にはフランシス・スコット・キーの妹と結婚し、家庭を持ちました。

政治活動の始まり

1799年、トーニーはメリーランド州下院議員に選出され、政治の世界に足を踏み入れました。しかし、1801年の再選時には挫折を味わい、フレデリックに移り住み、アナポリスで法律の仕事を続けました。1812年には米英戦争についての意見を表明し、連邦党からの脱退を考えましたが党籍は残し、1816年には州の上院議員として選出されました。さらに1824年の大統領選挙では、有名なアンドリュー・ジャクソンを支持することで民主党の一員となりました。

司法長官から財務長官への道

トーニーは1827年にメリーランド州検事総長に指名され、その後、1831年にジャクソン大統領からアメリカ合衆国司法長官に任命されました。彼はジャクソンの第二合衆国銀行廃止の政策を支援し、銀行の認許更新への拒否通告書を作成するなど、積極的な役割を果たしました。しかし、財務長官ウィリアム・デュアンが銀行存続を主張したため、デュアンは解任され、トーニーは1833年に新たに財務長官に任命されました。

財務長官としての業績

財務長官就任後のトーニーは、政府の預金を民間銀行に移すという声明を実行に移しました。この措置により、第二合衆国銀行はその中央銀行の機能を喪失し、最終的には1836年に特許が更新されなくなりました。新興企業は預金移管を歓迎しましたが、これにより金融恐慌が引き起こされ、上院から厳しい批判を受けました。そのため、トーニーは1834年に財務長官を辞任します。

最高裁判所長官としての役割

辞任後の1835年、トーニーは連邦最高裁判所の陪席判事に指名されますが、上院による承認は得られませんでした。しかし、翌年には最高裁判所長官としての任命が承認され、彼はジョン・マーシャルの後任としてその地位に就きました。

トーニーは、州の権限が強いことを支持する傾向がありました。これは、前任者ジョン・マーシャルの立場とは一線を画しており、判決も異なる結果を導くことがありました。その典型的な例が、1849年のスミス対ターナー事件で、トーニーは州の権限を拡張する判決を下しました。しかし、彼の立場は1857年のドレッド・スコット対サンフォード事件において問題視されました。トーニーは自由州に移住した奴隷が自由人となる権利を否定する判断を下し、これが後の南北戦争へとつながる要因の一つと言われています。

トーニーは長官の地位に留まり続け、リンカーン大統領の政策に対して影響を与え、複雑な時代の中でアメリカの法制度に大きな足跡を残しました。彼の業績は現在でも検討される重要な歴史とされています。

もう一度検索