ロジーナ・レヴィーン

ロジーナ・レヴィーン：伝説のピアノ教師

ロジーナ・レヴィーン（1880-1976）は、ロシアに生まれアメリカで活躍したピアニスト・ピアノ教師です。本名はロジーナ・ヤコヴレヴナ・レヴィナ。富裕な宝石商の娘として生まれ、幼少期から音楽の才能を開花させました。

若き才能の開花と結婚

モスクワ音楽院でサフォーノフに師事し、1898年に首席で卒業。その直後、5歳年上のピアニスト、ヨーゼフ・レヴィーンと結婚します。夫の才能を信じたロジーナは、自身の演奏活動を控え、教育と夫のサポートに専念することを決意しました。夫婦での2台ピアノ演奏は、聴衆を魅了しました。

アメリカでの教育活動

1919年、夫婦でアメリカ合衆国へ亡命。ヨーゼフがジュリアード音楽院で教鞭をとる傍ら、ロジーナは個人レッスンを通じて、音楽院への進学を目指す若者たちを指導しました。1944年にヨーゼフが急逝すると、ジュリアード音楽院はロジーナに夫の後任を託します。当初は戸惑ったロジーナでしたが、周囲の強い要望を受け、教授として後進の育成に尽力することを決意しました。

偉大な音楽家を育てた名教師

ロジーナ・レヴィーンは、ヴァン・クライバーン、ジョン・ブラウニング、ミッシャ・ディヒター、ラルフ・ヴォタペック、ジェフリー・シーゲル、白建宇、中村紘子など、数多くの著名なピアニストを育て上げました。彼女の指導は、技術的な完成度だけでなく、音楽への深い理解と愛情を育むものでした。門下生たちは、彼女の教えを胸に、世界的な音楽家として活躍しました。また、指揮者のジェームズ・レヴァイン、映画作曲家のジョン・ウィリアムズなども彼女の薫陶を受けています。

ソリストとしての晩年

長年、教育に専念してきたロジーナでしたが、70代を迎えてから、再びソリストとしての活動を始めます。ジュリアード弦楽四重奏団との共演や、アスペン音楽祭での協奏曲演奏など、精力的な活動を展開しました。そして1963年、82歳にして、レナード・バーンスタイン指揮のニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団と共演。モスクワ音楽院の卒業試験以来となるショパンの《ピアノ協奏曲第1番》を演奏し、聴衆を感動させました。その後、ショパンやモーツァルトのピアノ協奏曲の録音も行っています。

ロジーナ・レヴィーンの遺産

2003年には、かつての門下生であるサロメ・ラムラス・アルカートフによって、ドキュメンタリー映画「ロジーナ・レヴィーンの遺産」が制作され、彼女の教育者としての偉業が改めて評価されました。ロジーナ・レヴィーンは、教育と演奏を通じて、音楽界に多大な貢献を果たした人物として、その名は永遠に語り継がれるでしょう。

参考文献：Robert K. Wallace, A Century of Music-Making (1976)

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