ロスキレ条約 (1658年)

ロスキレ条約 (1658年): 北方戦争における転換点

ロスキレ条約は、1658年3月8日（グレゴリオ暦）/2月26日（ユリウス暦）に、デンマーク領ロスキレで締結された、デンマーク＝ノルウェー王フレデリク3世とスウェーデン王カール10世の間の条約です。この条約は、北方戦争の最中に、スウェーデンがデンマークに対して圧倒的な優位を示した結果として成立しました。

背景: 氷上侵攻とデンマークの敗北

カール10世率いるスウェーデン軍は、1658年2月11日にユトランド半島を渡り、氷上侵攻を敢行しました。この奇襲により、デンマークはシェラン島を占領され、大敗を喫しました。デンマーク＝ノルウェーは独立を維持するため、領土の約3分の1にあたる広大な地域をスウェーデンに割譲せざるを得なくなりました。

条約の内容: 領土割譲と軍事協力

ロスキレ条約の主な内容は以下の通りです。

領土割譲:
スコーネ地方（デンマーク領）
ブレーキンゲ地方（デンマーク領）
ハッランド地方（ブレムセブルー条約によりスウェーデンが30年間占有していた、デンマーク領）
ボーンホルム島（デンマーク領）
ブーヒュースレーン地方（ノルウェー領）
トロンデラーグ地方（ノルドモレとロムスダルを含む、ノルウェー領）
軍事協力:
デンマークは全ての反スウェーデン同盟から脱退する。
デンマークは海峡を通過してバルト海に入るスウェーデンに敵対的な軍艦の通過を阻止する。
デンマークはカール10世の戦争のために軍隊を供出する。
その他:
ホルシュタイン＝ゴットルプ公フレゼリク3世の領地を全て返還する。
デンマークはスウェーデンの占領軍の費用を支払う。

これらの条項により、スウェーデンはバルト海における支配力をさらに強固なものとし、デンマークは経済的にも軍事的にも大きな打撃を受けました。

条約のその後: 戦争の再開とコペンハーゲン条約

しかし、カール10世はロスキレ条約に満足せず、デンマークを完全に消滅させることを企て、条約を破棄して再びデンマーク＝ノルウェーを攻撃しました。この攻撃に対し、オランダがデンマークを支援し、コペンハーゲンは抵抗に成功しました。その結果、1660年のコペンハーゲン条約で、ボーンホルム島はデンマークに、トロンデラーグ地方はノルウェーに返還されました。ただし、それ以外の割譲地はスウェーデン領のままとなりました。

トロンデラーグ地方の抵抗とジェノサイドの可能性

トロンデラーグ地方では、スウェーデンの占領に対する住民の激しい抵抗が起こりました。スウェーデンは徴兵を強化し、多くの住民を強制的にスウェーデン軍に編入しました。この強制的な徴兵は、地域社会に壊滅的な影響を与え、飢饉を引き起こしました。一部の歴史家は、この出来事を「トロンデラーグ人のジェノサイド」と見なしています。

スコーネ地方のスウェーデン化

ロスキレ条約でスウェーデンに割譲されたスコーネ地方は、その後、徐々にスウェーデンに統合されていきました。スコーネ貴族はスウェーデン貴族に同化され、スコーネ法はスウェーデンの法律に置き換えられました。また、スウェーデンの教会法が導入されるなど、スコーネ地方はスウェーデンの文化、法律、制度に組み込まれていきました。

結論: ロスキレ条約の歴史的意義

ロスキレ条約は、北方戦争におけるスウェーデンの覇権を確立し、デンマーク＝ノルウェーの勢力を大きく後退させた重要な条約です。しかし、この条約は同時に、地域住民の抵抗やナショナリズムの芽生えを促し、その後のスカンディナヴィアの歴史に大きな影響を与えました。

関連項目
ドミニウム・マリス・バルティチ
ロスキレ条約 (曖昧さ回避)

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