ロスコー・アーバックル

ロスコー・アーバックルの生涯と業績

ロスコー・アーバックル（Roscoe Conkling Arbuckle）は1887年3月24日にカンザス州スミスセンターで生まれ、1933年6月29日にニューヨークで心臓麻痺で亡くなったアメリカの喜劇俳優、映画監督、脚本家です。特にサイレント映画の全盛期に活躍し、その特異な体型と機敏な動きによって多くのファンを魅了しました。愛称の「Fatty」は「太っちょ」を意味し、日本では「デブ君」としても親しまれています。

幼少期とキャリアの始まり

アーバックルは、出生時の体重が5.9kgと非常に大柄でした。彼の家族は1歳の時にカリフォルニア州サンタアナに移住し、その後アーバックルは若干の年齢で働き始め、舞台にも立ちました。1909年には映画デビューを果たし、その後しばらくは舞台活動が主流となりました。海外巡業をする中で日本（東京や横浜）にも訪れています。

映画界での成功

アーバックルの映画キャリアは、1913年にスラップスティック・コメディのプロデューサー、マック・セネットによってキーストン社にスカウトされたことから本格的にスタートします。彼の演技は、映画『A Noise from the Deep』での「パイ投げ」シーンで特に知られており、これはアーバックルの特技の一つでもありました。また、彼は当時の新星チャーリー・チャップリンとも共演し、その後自らのプロダクションを設立しました。

キャリアの頂点

アーバックルと人気女優メーベル・ノーマンドとの共演作は、特に『ファッティとメーベル』シリーズで有名です。アーバックルのコメディは、彼自身のスタイルを確立し、喜劇のスターとして名を馳せる要因となりました。また、彼は1916年に自身のスタジオを設立し、20本の短編コメディを制作しています。特に、バスター・キートンに映画界への道を開いたことも特筆すべき点です。

衰退と法的トラブル

しかし、1921年に起こった事件によって、アーバックルのキャリアは一変します。女優ヴァージニア・ラッペの強姦殺人容疑で起訴されることとなり、これは当時のハリウッドを震撼させました。ラッペは事件の数日後に死亡し、その報道は大きな波紋を呼びました。結果としてアーバックルは無罪となりましたが、悪評が立ち、彼の作品が上映禁止になり、映画界からの追放に近い状態に置かれました。

ヴォードヴィルからの復活

アーバックルはその後も映画界に復帰を試み、1924年にはキートンと共に仕事をすることで徐々に監督業にシフトしていきました。彼は名前をウィリアム・グッドリッチに改めて活動し、この頃に成功を収めることになりました。

最晩年までの活動

彼の晩年は短いものでしたが、短編映画に取り組む姿勢は変わりませんでした。1933年に46歳でこの世を去るまで、多くの作品を残し、アーバックルはサイレント映画の喜劇界における重要な存在として知られ続けています。アーバックルの作品は、その後も研究者たちによって復元され、DVDなどの形で公開されるようになっています。

結婚と私生活

アーバックルは生涯に3度結婚しており、女優ミンタ・ダーフィーやドリス・ディーンと一時期は関係を持ちましたが、これらの結婚は必ずしも長続きするものではありませんでした。

アーバックルは映画界の金字塔的存在としての座を揺るぎないものにした一方で、法的なトラブルによりその業績は影に隠れてしまうこともありました。彼の作品は、今日に至るまで多くの人々に愛されており、その影響力は健在です。

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