ロスト・ケア

小説『ロスト・ケア』

『ロスト・ケア』は、葉真中顕によって書かれた日本のサスペンス小説で、2013年に光文社から初版が刊行され、2015年には文庫化された作品です。この小説は、第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、多くの読者に強い印象を与えています。2023年には映画化もされ、松山ケンイチと長澤まさみの初共演が話題となりました。

あらすじ

物語の中心にいるのは、東京都八王子にある介護付き有料老人ホーム「フォレスト・ガーデン」で働く介護士・斯波宗典。彼は若くして白髪が目立つ風貌ながら、非常に献身的で真面目な性格を持つ人物です。彼の努力が認められ、センターの利用者や同僚からも高く評価されています。

ある日、斯波が勤務する介護施設の利用者の自宅で、彼の父親とセンター長が亡くなっているのが発見されます。その父親は金にだらしない性格で、借金もあったため、周囲は窃盗目的の事件事故死と推測します。しかし、現場に落ちていた注射器の存在など、様々な疑惑が持たれます。また、防犯カメラには斯波がアリバイと異なる行動をとっていたことが映っていました。

取り調べの結果、斯波は心配する利用者のために自宅を訪れた際、父親とセンター長と遭遇し、争いの末に転落させたと語ります。家宅捜索によって彼の介護ノートが発見され、調査が進むにつれ、彼の勤務するセンターでの利用者の死亡数が異常なことが判明します。特に、斯波の休日に亡くなることが多いことが注目されます。

斯波は、介護する家族を助けるために、老人を殺すことを「救い」と考えたと告白します。彼は42人の老人を殺害したと自供し、最初の犠牲者は自身の父親だとします。斯波は、経済的に困窮し、父親の死を選択することで自らの思想が形成されていく様子が描かれています。

登場人物

• - 斯波宗典（しば むねのり）：主人公の介護士。献身的で信頼される存在だが、暗い過去を抱える。
• - 大友秀美（おおとも ひでみ）：取り調べの担当検事。自身も父を殺した経験を持つ複雑な人物。
• - 羽田洋子（はねだ ようこ）：介護が必要な母と幼い息子を持つシングルマザー。
• - 佐久間功一郎（さくま こういちろう）：斯波の同僚で、過去の仲間として彼を知る。

映画化

2023年3月24日に映画『ロスト・ケア』が公開され、監督は前田哲が務めました。撮影は山梨県や長野県の各所で行われ、リアリティのある映像として仕上げられています。映画は原作の持つ緊迫感と深い人間ドラマを映し出すため、細部にわたる演出が施されています。

キャストには、松山ケンイチが斯波宗典役、長澤まさみが大友秀美役を演じ、彼らの演技が物語に厚みを与えています。

結論

『ロスト・ケア』は、介護という感情的に重いテーマを扱った小説でありながら、人間の複雑さや深い心理を巧みに描写しています。現代社会が抱える問題に対する鋭い提起をし、読者に考えさせる魅力的な作品です。また、映画化により、より多くの人々にそのストーリーが届けられることとなりました。

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