ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド

「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」（Rockin' in the Free World）は、カナダの著名なミュージシャン、ニール・ヤングが1989年にリリースしたアルバム『フリーダム』に収録された楽曲です。この曲は、アルバムのオープニングにアコースティック・バージョン、エンディングにエレクトリック・バージョンが配置されています。また、シングルとしてはエレクトリック・バージョンがA面に収録されてリリースされました。

背景

曲のタイトルは、ヤングとクレイジー・ホースのギタリストであるフランク・“ポンチョ”・サンペドロとの会話から生まれたフレーズに由来しています。ヤングはこの曲をたった1日で完成させ、1989年2月21日のシアトルでのライブでリハーサルなしで初演しました。歌詞には、当時アメリカ大統領に就任したジョージ・H・W・ブッシュへの批判や、イランの指導者ルーホッラー・ホメイニーがアメリカを「グレート・サタン」と表現したこと、さらには1988年の大統領選挙におけるジェシー・ジャクソンのスローガンも含まれています。

アルバム『フリーダム』のクレジットにはヤングが単独で作詞・作曲した形で記載されていますが、後にサンペドロが共著者としてのクレジットを主張し、最終的に両者の共同作の形となりました。

アコースティック・バージョンはニューヨーク州ロングアイランドでのヤングのソロパフォーマンスを録音したもので、エレクトリック・バージョンはバーン・レッドウッド・デジタルで、サンペドロを中心に数人のミュージシャンとともに録音されました。さらに、1991年に発表されたライブアルバム『Weld』には、クレイジー・ホースとの演奏によるバージョンも収録されています。

反響と評価

「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」は、アメリカのBillboard Hot 100にはランクインしませんでしたが、メインストリーム・ロック・チャートでは2位を記録しました。音楽評論家アンディ・グリーンは、2015年に『ローリング・ストーン』誌でこの曲がヤングの音楽キャリアの新しい時代の始まりを示す重要な作品であると評しています。また、2004年に発表された「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500」では、214位に選出され、改訂版では216位となりました。

大衆文化への影響

この曲は、マイケル・ムーアの映画『華氏911』（2004年）のクレジットで使用され、サウンドトラックアルバムにも収録されました。最初はザ・フーの曲を使用する予定だったが、作曲者の拒絶によりこちらの曲が選ばれました。また、2010年にリリースされた音楽ゲーム『Guitar Hero: Warriors of Rock』でも使われています。

2015年、ドナルド・トランプがアメリカ大統領選挙で共和党候補として名乗りを上げた際に楽曲が流され、ヤングは自身のFacebookで不満を表明しました。トランプ側は使用許可を得ていると主張しましたが、ヤングの意向を尊重して使用は中止されました。ヤングはその後の2018年のアルバム『ザ・ヴィジター』でトランプの政策を批判しています。

カヴァーアーティスト

この曲は多くのアーティストによってカバーされています。例えば、アラームやビッグ・カントリー、パール・ジャムなどがあります。特にパール・ジャムはライブで頻繁に演奏し、1993年にはヤングと共演して披露しています。他にも、多くのアーティストがこの曲を自身のアルバムやありのままのアコースティックセッションで再演しています。

「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」は、ただの楽曲にとどまらず、政治的メッセージや社会問題をテーマにした名曲として、世代を超えて愛され続けています。

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