ロッキード L-1011 トライスター

ロッキード L-1011 トライスター

ロッキード L-1011 トライスターは、アメリカのロッキード社によって開発された唯一のワイドボディ三発ジェット旅客機である。この機種は、航空史において重要な位置を占めており、1972年に最初の商業稼働を開始した。これにより、航空業界は技術革新やデザインにおいて新たな時代を迎えることとなった。

機体の概要

トライスターの愛称は、エンジンがオリオン座の「三ツ星」の形状に似ていることから命名された。1960年代半ばから開発が始まり、ロッキード社にとっても初の本格的なジェット旅客機となった。特に印象的なのは、コックピットデザインや自動操縦装置であり、特に当時の軍用機技術を生かして、カテゴリーIII ILSに対応した自動操縦装置が注目された。この特徴により、トライスターは「早過ぎたハイテク機」とも称されることとなった。

開発の歴史

ロッキード社は、ダグラス社やボーイング社と競う中で、いかにして再び旅客機市場に戻るかを模索していた。そこで、L-1011は、その技術力を結集して新たに開発された旅客機であり、航空業界の競争において有利な位置を確保するためのものであった。しかし、開発の遅れや予期しない問題が発生し、この機種は市場に登場するまでに多くの困難に直面した。

飛行機としての特徴

トライスターのデザインは、顧客のニーズを反映しており、特に座席配置や貨物室の設計が工夫されていた。客室は広々としており、利用者の快適性を追求した設計であることから、当時の航空機のスタイルを大きく変えた。加えて、航空機に搭載されたRB211エンジンは、高い燃費性能と低い騒音レベルを実現し、環境面への配慮も考えられている。このように、トライスターは形状や機能の両方において、他機と一線を画す存在であった。

販売不振とその理由

しかし、トライスターは競争の激化や価格競争の影響、さらには開発の遅れから販売に苦しむことになった。特に、ロッキード事件として知られる政治スキャンダルが、販売活動に暗い影を落とした。この事件では、ロッキード社がさまざまな国で贈賄を行い、結果的に企業イメージの低下を招いた。このため、ロッキード社はその後の航空機市場での競争力を失うことにつながった。

日本国内での展開

トライスターは、全日空（ANA）によって1974年から導入され、同社初のワイドボディ機として広く運用された。特に大阪国際空港での静音性のメリットが評価され、輸送の重要な一端を担ったが、時を経るにつれ、ボーイング747やB767などの機体に押され、次第にその役割を失っていった。在日航空会社の中ではANAが唯一の顧客となり、3発エンジン機としては最後まで運用された。

生産終了とその影響

1981年に250機が製造された段階で、トライスターの生産は終了した。この結果、ロッキード社は民間航空機市場からの撤退を決定することとなった。この選択は、社内の経営を健全化する一方で、旅客機事業が企業の成長を妨げる要因となることを示していた。

まとめ

ロッキード L-1011 トライスターは、航空機設計の革新を象徴する機体であったが、販売不振やスキャンダルなど多くの要因によって、成功を収めることができなかった。その結果、航空業界内でのロッキード社の地位は大幅に低下し、今なおトライスターの名は歴史の中で語り継がれることとなる。

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