ロバート・シムソン

ロバート・シムソン（1687年10月14日 – 1768年10月1日）は、18世紀スコットランドで活躍した数学者です。グラスゴー大学で長年にわたり数学教授を務め、幾何学で知られる「シムソン線」は彼の名にちなんで名付けられたものです。

シムソンは1687年にグラスゴーの裕福な商人の長男として生まれました。1701年にグラスゴー大学に入学し、当初は聖職者を目指して神学やセム語を集中的に学びましたが、大学の正規課程にはなかった数学に独学で深く傾倒していきました。特にユークリッドの『原論』に触発され、幾何学への強い情熱を抱くようになります。彼の数学に対する熱意は大学側にも認められ、数学科長のポストを打診されるほどでしたが、彼は一度自身の数学教育における正式な訓練不足を理由に辞退しています。しかし、数学への探求心を抑えきれず、一年後にはその職を引き受け、数学の知識習得に励みました。

1711年、23歳でグラスゴー大学の数学教授に就任したシムソンは、数学の教育課程の設計に携わり、幾何学、代数学、対数、光学といった幅広い分野の講義を担当しました。彼の指導からは、コリン・マクローリンやマシュー・スチュワートといった、後に名を成す数学者たちが育ちました。教授としての活動に加え、シムソンは生涯を通じて古代ギリシャ数学、特にユークリッドやアポロニウスの古典の研究と復元に情熱を注ぎました。1761年に教授職を引退し、彼の地位は弟子のジェームズ・ウィリアムソンに引き継がれました。

彼の数学的業績は、現代的な発見よりも、古代の偉大な幾何学者の遺産を正確に理解し、後世に伝えることに重点が置かれています。主な著作としては、1735年に出版された円錐曲線に関する『Sectionum conicarum libri V.』があり、その第3巻は英語にも訳されました。また、パップスの記述を基に、アポロニウスの失われた平面軌跡に関する著作を復元した『Apollonii Pergaei locorum planorum libri II.』を1749年に刊行しています。そして、彼の最も重要な功績の一つが、ユークリッドの『原論』の厳密なラテン語および英語訳の出版です。1756年に刊行されたこの訳本は、その正確さから長らくイギリスにおけるユークリッド研究の標準テキストとして広く利用されました。1753年には、フィボナッチ数列における隣接項の比率が黄金比に近づくという性質にも言及したことが知られています。

人物像としては、長身で体格が良かったと伝えられていますが、その優れた学識にもかかわらず非常に謙虚で控えめな人柄であり、自身の功績を積極的に宣伝することは少なかったようです。また、社交的な一面もあり、自らが設立したダイニングクラブの例会を主宰するなど、良い仲間との交流を楽しみました。数学や古典以外にも、植物学に特別な興味を持ち、その分野でも専門家として認められていました。生涯独身を貫き、80歳でグラスゴー大学の寮で亡くなりました。彼の死後、約850冊にも及ぶ蔵書は大学に寄贈されました。故郷に近いウェスト・キルブライドの丘には、1865年に彼の功績を称える記念碑が建立されています。

ロバート・シムソンは、古代ギリシャ数学の復興に尽力し、特にユークリッド原論の正確な翻訳を通じて、後の時代の数学教育と研究に lasting な影響を与えた重要な数学者として記憶されています。

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