ロバート・ダニエル・マーフィー

ロバート・ダニエル・マーフィー：アメリカを支えた外交官の生涯

ロバート・ダニエル・マーフィー（1894年10月28日 - 1978年1月9日）は、アメリカ合衆国の外交官です。ウィスコンシン州ミルウォーキーで生まれ、そのキャリアは1917年に在スイス・ベルンのアメリカ公使館から始まりました。その後、チューリッヒやミュンヘンでの副領事、パリ総領事を歴任し、ヴィシー政権下ではアメリカ合衆国代理大使を務めました。

第二次世界大戦下ヨーロッパでの活躍

マーフィーの外交官としての才能は、第二次世界大戦中に特に発揮されました。1941年2月には、アメリカとフランス間のマーフィー・ウェイガン協定の締結を成功させます。この協定は、イギリスの経済封鎖下にあったフランス領北アフリカへのアメリカからの輸出を認めるもので、戦略的にも重要な意味を持っていました。

1942年秋、ルーズベルト大統領の指示により、マーフィーは公使級個人使節としてフランス領北アフリカに派遣されます。これは、連合国による同地域への地上軍上陸作戦（トーチ作戦）を円滑に進めるための重要な活動でした。マーフィーは、アルジェリアに駐屯するフランス陸軍の幹部たちと接触し、連合国への協力を取り付けようと奔走しました。

トーチ作戦開始直前には、マーク・W・クラーク将軍と共に、イギリスに批判的なフランス軍の将軍アンリ・ジローを説得し、連合国への協力を取り付けました。さらに、ジローの協力を得て、フランス領北アフリカ総督のフランソワ・ダルランを一時的に拘束し、最終的にダルランからの協力を得ることに成功しました。しかし、その後の混乱の中、ダルランは暗殺されてしまいます。

戦後のキャリア

第二次世界大戦後、マーフィーは外交官としてさらに活躍します。駐ベルギー大使、駐日大使を歴任し、その後、国務省に戻り、アイゼンハワー政権下で国連担当次官補、政治担当副次官、政治担当次官を歴任しました。1956年には、初の「Career Ambassadors」の称号を得るという栄誉にも輝いています。

1958年には、大統領個人使節としてレバノン危機解決のための交渉にあたり、その外交手腕を遺憾なく発揮しました。1959年に外交官を引退した後も、ケネディ、ジョンソン、ニクソンの各政権でアドバイザーとして活躍しました。また、ビルダーバーグ会議のメンバーでもありました。

マーフィーは、その功績を称えられ、2006年にはアメリカにおいて優れた外交官を記念する切手の1人に選ばれました。

著書

マーフィーは、自身の経験を基にした著書も残しています。

The Bases of Peace (1958)
Diplomat among Warriors (1964)

資料

マーフィーの功績を記録した資料として、「マーフィー文書（the Robert Daniel Murphy Papers, 1913-1977）」がスタンフォード大学フーバー研究所に所蔵されています。

まとめ

ロバート・ダニエル・マーフィーは、その生涯を通じて、アメリカ合衆国の外交に大きく貢献しました。彼の卓越した交渉能力と、国際情勢に対する深い理解は、アメリカの外交史において重要な足跡を残しました。

参考文献

池井優『駐日アメリカ大使』（文藝春秋［文春新書］, 2001年）。
千々和泰明「戦後日米関係における駐米大使の役割--その重要性と限界」『国際政治』140巻、2005年3月。
千々和泰明「権威をめぐる相克--駐日米国大使と在日・在沖駐留米軍1952-1972年」『国際安全保障』35-3、2007年。

外部リンク

The Papers of Dwight David Eisenhower, Volume XX
* Register of the Robert Daniel Murphy Papers, 1913-1977 - Online Archive of California

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