ロバート・ニーリー・ベラー

ロバート・ニーリー・ベラー（Robert Neelly Bellah, 1927年2月23日 - 2013年7月30日）は、アメリカ合衆国を代表する宗教社会学者です。彼の研究は、宗教と社会の関係、アメリカの文化と価値観、そして宗教の進化といった幅広いテーマに及んでいます。

生涯と学歴

ベラーはオクラホマ州で生まれ、ハーバード大学で社会学の博士号を取得しました。その後、ハーバード大学やカリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執り、多くの学生を指導しました。晩年は、自身のライフワークとも言える宗教進化論の完成に情熱を注ぎました。

研究内容と業績

ベラーの研究は、社会学の巨匠マックス・ウェーバーの理論を受け継ぎ、師であるタルコット・パーソンズの「近代化論」から多大な影響を受けました。彼は、社会変革と宗教倫理の関係を深く探求し、特に「市民宗教」に関する学説は、宗教学や社会学だけでなく、政治の分野でも多くの議論を巻き起こしました。

市民宗教

ベラーの市民宗教に関する理論は、国家や社会における宗教的な要素を考察する上で重要な概念です。彼は、特定の宗教団体に属していなくても、共通の価値観や信仰を共有することで、社会的な結束が生まれると指摘しました。この理論は、アメリカ社会の独自性を理解する上で重要な視点を提供しています。

『心の習慣』

彼の代表作の一つである『心の習慣――アメリカ個人主義のゆくえ』は、アメリカの個人主義がどのように形成され、変化してきたのかをインタビュー調査に基づいて分析したものです。この著作は、アメリカ文化の本質を深く理解するための必読書として、今でも多くの読者に読まれています。

宗教進化論

『社会変革と宗教倫理』でベラーは、原始宗教から古代宗教、歴史宗教、そして現代宗教へと至る5つの段階からなる「宗教進化論」を提唱しました。彼は、宗教が社会の変化とともに進化し、複雑化していく過程を詳細に分析しました。

日本研究

ベラーは、西洋以外の国として日本が近代化に成功した理由にも関心を抱き、『徳川時代の宗教』を著しました。彼は、日本の近代化の成功は、江戸時代の文化的伝統に根ざしていると論じ、その宗教観や倫理観が近代化を支えた要因の一つであると指摘しました。

主要な著書

Apache Kinship Systems: the Harvard Phi Beta Kappa Prize Essay for 1950 (1952)
Tokugawa Religion: the Values of Pre-industrial Japan (1957) - 『徳川時代の宗教』として翻訳
Beyond Belief: Essays on Religion in a Post-traditional World (1970)
The Broken Covenant: American Civil Religion in Time of Trial (1975) - 『破られた契約――アメリカ宗教思想の伝統と試練』として翻訳
Imagining Japan: the Japanese Tradition and its Modern Interpretation (2003)
Religion in Human Evolution:From the Paleolithic to the Axial Age(2011)
Habits of the Heart: Individualism and Commitment in American Life (1985) - 『心の習慣――アメリカ個人主義のゆくえ』として翻訳
The Good Society (1991) - 『善い社会――道徳的エコロジーの制度論』として翻訳

影響と遺産

ロバート・ベラーの研究は、社会学、宗教学、政治学など、様々な分野に大きな影響を与えました。彼の著作は、現代社会における宗教の役割や、文化的な価値観の重要性を考察するための重要な手がかりとなっています。彼の学問的遺産は、今後も多くの研究者や学生に引き継がれ、社会の理解を深める上で重要な役割を果たし続けるでしょう。

外部リンク

* 心学と20世紀日本 - 「心学開講270年記念大会」講演録、2000年

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