ロバート・フラッド (医師)

ロバート・フラッドの生涯と業績

ロバート・フラッド（1574年1月17日 – 1637年9月8日）は、ルネサンス後期に活躍したイングランドの医師であり、神秘主義や音楽、数学、天文学にも関心を寄せた多才な人物です。フラッドは、当時の医学界ではあまり広まっていなかったパラケルススの思想を基盤として学び、特にオカルトや神秘主義に惹かれていました。また、彼は薔薇十字団を支持し、カバラに関する知識も有していました。

出身と家系

フラッドは、ケント州ベアーステッドにあるミルゲイトハウスで生まれました。彼の父、トーマス・フラッドはエリザベス1世の時代における高官であり、政府の財務に関与していました。母親のエリザベス・アンドレス・フラッドは、父系の紋章を持つ家系に生まれました。フラッドの名字「Fludd」は、ウェールズ語で「血まみれの狼」という意味を持つ「Fladd」に由来します。

医師への道のり

1591年、フラッドはオックスフォード大学のセント・ジョンズ・カレッジに入学し、医学について学びます。1597年に学士号を、1598年には修士号を取得しました。このカレッジは医学のフェローシップを提供していたため、医学の道に進むきっかけとなりました。特に、当時のフェローであったマシュー・グウィンは、ガレノスの医学に加え、パラケルススの影響も受けていました。フラッドは、グウィンの著作に触れることで、医学に関する考え方を深めた可能性があります。

その後、1598年から1604年にかけてヨーロッパ本土を旅行し、特にピレネー山脈で冬を過ごし、テウルギアに関する知識を養いました。1604年にイングランドに帰国し、オックスフォード大学のクライストチャーチに入学。修業を重ね、当時の医学の権威であるガレノスやヒポクラテスに基づいた論文を書き、1605年には医学士と医師の学位を取得しました。

英国王立内科医協会での活動

フラッドは、ロンドンに引っ越した後、英国王立内科医協会に入会するための試験をいくつか受けましたが、当初は難色を示されました。その理由は、彼がパラケルススの思想を採用しており、ガレノスといった古典的権威からの考えを受け入れなかったからです。最終的には1609年に入会が許可され、以降、協会での業務を通じて成功を収めました。

1614年のロンドン薬剤師の監査に参加し、1618年にはPharmacopoeia Londinensisという調剤に関する標準的なテキストの編纂に関与しました。彼は、協会内での地位を確立し、ウィリアム・ハーベーの血液循環の理論を支持する重要な人物の1人とも言われています。

オカルトに対する興味

フラッドは、医学において超自然的な権威を重視し、本当の知恵は自然魔術の実践者たちの著作に見出されると信じていました。これは、彼自身が数学者ピタゴラスに影響を受けていたことを示しており、彼は「数字により大いなる秘密を知ることができる」と考えました。この考え方は、ケプラーとの激しい論争を引き起こすことになります。

最期

フラッドは1637年9月8日にロンドンの自宅で63歳で亡くなりました。彼の遺言により、遺体は故郷のホーリークロス教会に埋葬されました。彼の人生は、多岐にわたる研究や思想を通じて、ルネサンス期における医学とオカルトの交錯を象徴するものとして記憶されています。

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