ロバート・ブルーナー

ロバート・ブルーナーは、1958年に生まれたアメリカ合衆国の著名なインダストリアルデザイナーです。特に、1989年から1996年にかけてApple Computer（現Apple Inc.）のインダストリアルデザイングループ・ディレクターを務めたことで広く知られています。現在は、自身が設立したデザイン事務所Ammunition Design Groupの創設者であり、パートナーとしてデザイン界を牽引しています。

ブルーナー氏のキャリアは、1981年にサンノゼ州立大学でインダストリアルデザインの学士号を取得したことから始まりました。大学卒業後、彼はLunar Designを含む複数のハイテク関連企業でデザイナーやプロジェクトマネージャーとして経験を積みました。これらの経験が、後のAppleでの活躍の土台となります。

1989年、ブルーナー氏はAppleに入社し、インダストリアルデザイングループのディレクターに就任します。この時期、彼はPortableシリーズの後継となるPowerBookなど、Appleの主要な製品ライン全体のデザインディレクションを担当しました。彼のリーダーシップのもと、Appleのデザインは新たな方向性を模索しました。また、Apple在籍中の特に重要な功績の一つに、後のiMacやiPhoneなど、Appleを象徴する製品デザインを数多く生み出すことになるデザイナー、ジョナサン・アイブ氏をデザインチームに迎え入れたことが挙げられます。ブルーナー氏は複数回にわたりアイブ氏を説得し、1996年についに雇用を実現させました。

1996年1月、ブルーナー氏はAppleを離れ、国際的に著名なデザインファームであるPentagramのサンフランシスコオフィスにパートナーとして加わりました。Pentagramでは、幅広いクライアントのデザインプロジェクトを手がけました。この時期には、サンフランシスコに拠点を置く換気製品メーカー、Zephyr Ventilation社の創業者であるアレックス・シオウ氏と共に、屋外用グリル製品の設計・製造を行うFuego社を立ち上げるなど、多角的な事業にも関わっています。このシオウ氏との協力関係は、Zephyr Ventilation社のモダンなレンジフード「Arc Collection」のデザインにも繋がっています。

2007年中頃、ブルーナー氏はPentagramを離れ、自身のデザインファームであるAmmunition Design Groupを設立しました。Ammunitionはサンフランシスコを拠点とし、製品デザインを中心としながらも、ブランドアイデンティティ、インタラクションデザイン、そしてデザイン戦略に関するコンサルティングなど、包括的なデザインサービスを提供しています。2008年には、元MetaDesignのリーダーであったブレッド・ウィッケンズ氏、マット・ローランドソン氏がパートナーとしてAmmunitionに加わり、組織体制を強化しました。現在、ブルーナー氏はAmmunitionのデザインチームを率いて、米国内外の様々な分野のクライアントに対し、革新的で影響力のあるデザインソリューションを提供しています。近年は、温度制御可能なマグカップなどを開発するEmber Technologies社の取締役も務めています。

彼のデザイン作品は、北米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど、世界中で広く展示され、出版物で紹介されています。特に製品デザインにおける功績は数々の賞によって称賛されており、インダストリアルデザイナーズ・オブ・アメリカ（IDSA）とビジネス・ウィーク誌が共催する「デザイン・オブ・ザ・イヤー」としても知られるIDSA賞を、これまでに23回も受賞するという輝かしい実績を持っています。また、彼の代表的なデザインのいくつかは、ニューヨーク近代美術館（MoMA）、クーパーヒューイット美術館（スミソニアンデザイン博物館）、インディアナポリス美術館（IMA）、サンフランシスコ近代美術館（SFMoMA）といった、世界的に権威ある美術館の常設コレクションに収蔵されており、そのデザインが持つ歴史的、芸術的な価値が高く評価されています。ロバート・ブルーナーは、Appleでの革新的な仕事からAmmunitionでの幅広い活動に至るまで、インダストリアルデザインの分野において多大な貢献を続けている、現代を代表するデザイナーの一人です。

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