ロバート・モリス・コープランド

19世紀のアメリカにおいて、造園家および農業家としてその名を馳せたロバート・モリス・コープランド（Robert Morris Copeland、1830-1874年）は、マサチューセッツ州ロクスベリーに生を受けました。彼は、当時の急速な都市化と社会の変化の中で、緑豊かな環境が人々の生活にもたらす重要性に着目し、アメリカ東海岸を中心に数多くのランドスケープデザインを手がけました。

若き日のコープランドは、著名な詩人ヘンリー・ワズワース・ロングフェローを敬愛し、彼の母校であるハーバード大学でリベラルアーツを学びました。この幅広い教養が、その後の彼の多角的な活動の基盤となったと考えられます。大学卒業後、彼はまずビーバーブルックの地で近代的な農業経営に着手し、農業家としての経験を積みました。

1854年には、後にミネアポリスのパークシステム設計などで知られるホーレス・クリーブランドとパートナーシップを組み、景観設計や装飾園芸の分野で事業を開始します。彼らは共同で造園事業を進め、1856年には、当時アメリカで最も注目されていたプロジェクトの一つであったニューヨークのセントラルパーク設計コンペティションに、ロングフェローと協働して参加しました。残念ながら彼らの案は採用されませんでしたが、この経験はコープランドにとって、大規模な都市緑地計画に関わる貴重な機会となりました。その後、1859年にはカントリーライフについての書物や、農業、園芸、造園に関する実践的なハンドブックを刊行し、自身の知識と哲学を広く共有しました。

この頃クリーブランドとのパートナーシップは解消され、1862年からは南北戦争に兵士として従軍し、彼のキャリアは一時中断されます。しかし、除隊後、彼は再び造園の道に戻り、当時アメリカ北東部で盛んになりつつあった造園事業に本格的に取り組み始めました。

コープランドの主な実績は、アメリカ東海岸に広がる多岐にわたる緑地計画に及びます。バーモント州ウッドストックのフレデリック・ビリング不動産におけるマスタープラン、リゾート地として知られるマーサズ・ヴィニヤードのオークスブラフス・コミュニティ開発などが挙げられます。また、マサチューセッツ州コンコードやコネチカット州ハートフォードにおけるサミュエル・コルトの広大な不動産開発にも携わりました。さらに、マサチューセッツ州グロスターのオークグローヴ墓地、コンコードにある歴史的なスリーピーホロー墓地、そしてメルローズのワイオミング墓地といった霊園設計も手がけています。このように、コープランドは東海岸各地で、都市公園や郊外緑地、墓地、そして郊外住宅地の設計・計画に数多く貢献し、多様なニーズに応じたランドスケープデザインを展開しました。

晩年、コープランドは近代都市が抱える環境問題に深く関心を寄せました。1872年には、ボストン市の都市環境を改善するため、「アメリカで最も美しい都市」をテーマとした著作を通じて、革新的な公園システム構築のアイデアを発表しました。これは、都市全体に緑のネットワークを整備することで、公衆衛生の向上や市民の生活の質の向上を目指す壮大な構想でした。しかし、彼は自身が提唱した都市公園緑地系統の夢が実現するのを見ることなく、1874年に突然この世を去りました。

ロバート・モリス・コープランドは、その短い生涯の中で、造園と農業の両分野で活躍し、特に都市における緑地の役割とその可能性を深く追求しました。セントラルパークコンペへの挑戦、多様なプロジェクトでの実践、そして晩年の都市システム構想は、19世紀後半のアメリカにおけるランドスケープアーキテクチャーの発展において重要な足跡を残しました。

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