ロバート・ローウィ

ロバート・ハリー・ローウィー：アメリカ・インディアン研究の巨人

ロバート・ハリー・ローウィー (1883年6月12日-1957年9月21日) は、20世紀におけるアメリカ人類学を代表する学者の一人です。オーストリア・ウィーンにユダヤ系家庭に生まれた彼は、1893年にアメリカ合衆国へ移住、その後ニューヨーク市立大学シティカレッジを卒業、コロンビア大学で博士号を取得しました。彼の学問的探究心と卓越した分析能力は、アメリカ先住民、特にアメリカ・インディアンの文化理解に多大なる貢献を果たしました。

1909年、ローウィーはアメリカ自然史博物館のキュレーター助手としてキャリアをスタートさせます。彼は博物館の資源を活かし、アメリカ・インディアンの文化調査のための遠征隊を自ら組織、先住民社会への深い理解を目指しました。中でも、平原部に住むクロウ族に関する研究は彼のライフワークとなり、彼らの民族誌、言語、社会組織、宗教、芸術など多岐にわたる分野で貴重な研究成果を残しました。ローウィーのクロウ族研究は、単なる民族学的記述にとどまらず、当時の社会人類学理論の発展に大きく寄与しました。彼の緻密なフィールドワークと、先住民の視点を取り入れた分析手法は、現代人類学の基礎を築く上で重要な役割を果たしています。

彼の研究対象はクロウ族だけにとどまりません。ローウィーは、アリカラ族、ショショーニー族、マンダン族、ヒダツァ族など、様々な部族の社会組織や文化を研究対象とし、その知見を数多くの著作にまとめました。代表的な著書としては、『原始社会 (Primitive Society) 』(1919年) 、『国家の起源 (The Origin of the State)』(1927年) などが挙げられます。これらの著作は、世界中の人類学者に影響を与え、今日でも人類学研究において重要な参考文献として参照されています。

ローウィーは、文化や社会を総合的に理解するために、民族誌調査と同時に、言語学や心理学といった多様な分野の知見を取り入れました。特に、色彩名称に関する研究は、異なる文化における色の認識の差異を明らかにした画期的なものでした。また、ローウィーは母系社会の構造や機能を分析した『The Matrilineal Complex』(1919年)において、母系社会の複雑さを明らかにし、人類学における議論を深めました。

ローウィーの業績は、アメリカ・インディアン研究に留まらず、文化人類学、社会人類学の理論的発展に大きく貢献しました。彼は、文化相対主義の立場から、様々な文化を偏見なく理解し、分析しようとする姿勢を貫きました。彼の研究は、単に事実を記述するだけでなく、文化の多様性と人間の普遍性を探求するものでした。ローウィーの残した膨大な研究成果と、その学問的姿勢は、現代の人類学研究者にとって、今もなお貴重な指針となっています。彼の功績は、アメリカにおける人類学の発展に計り知れない影響を与え、その名は後世に語り継がれるでしょう。

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