ロバート・ワイト:インドの植物研究に生涯を捧げたスコットランドの医師
ロバート・ワイト(Robert Wight,
1796年7月6日 –
1872年5月26日)は、19世紀にインドで活躍したスコットランドの医師であり、著名な植物学者です。彼は30年以上にわたりインドに滞在し、マドラス植物園の園長を務めるなど、インドの植物研究に大きな貢献をしました。
生い立ちと初期のキャリア
ワイトは、スコットランドのイースト・ロシアンで、
エディンバラの法廷外弁護士の息子として生まれました。
エディンバラ大学で医学を学び、1816年に外科医の資格を取得した後、2年間船医として働きました。1819年、東インド会社の軍医助手としてインドに渡り、そこで植物学への興味を深めていきます。
インドでの植物研究
1826年、ワイトは東インド会社の博物学者に任命され、マドラスを中心にインド各地で植物採集を行いました。1826年から1828年の間には、南インドで多数の植物を採集し、
グラスゴー大学のウィリアム・ジャクソン・フッカーに送りました。これらの植物は、ヴェールール、サマラーコタ、ラージャムンドリーなどで採集され、現地の協力者によってコレクションは充実していきました。
ワイトは、植物園の仕事から軍医の仕事に戻ることもありましたが、その間もタンジャーヴールの植物研究を続けました。1831年に健康上の理由でスコットランドに戻った際には、3000から4000種、100,000点もの植物標本を持ち帰りました。これらの標本は、
グラスゴー大学の植物学教授ジョージ・ウォーカー=アーノットによって研究され、ワイト自身も『Spicilegium Neilgherrense』を出版しました。
植物図譜の出版と貢献
1840年から1850年の間には、『Illustrations of Indian Botany』を出版し、高い評価を得ました。また、ウォーカー=アーノットとの共著で『Prodromus Florae Peninsulae Indiae Orientalis』も執筆しました。1834年に再びインドに戻ったワイトは、軍医の仕事に戻った後、タバコや綿花などの栽培を統括する産業部門に転属しました。1841年から1850年の間は、コインバトールの試験農場で働きました。
ワイトは、インドの植物の図譜を作成することに情熱を燃やし、自宅に20人もの現地の画家を集めて図を描かせました。特に、彼の好んだ画家であるRungiah (Rungia) と Govindooは、6巻に及ぶ大著『Icones Plantarum Indiae Orientalis』の大部分の図版を描きました。また、ワイトは、インド人画家Govindooの名をラン科の属名(ゴヴィンドーイア属、現在はTropidia属のシノニム)に命名するという、当時としては珍しい行為も行いました。
その他の活動
ワイトは、マドラス農業園芸協会を設立し、『マドラス文芸科学雑誌』に寄稿しました。また、綿花に関する記事を『ガーデンズクロニクル』に寄稿したり、エドワード・ウォーニングの『インド薬局方』に薬用植物の効能などの情報を提供したりしました。さらに、インドで活動する植物学者や園芸家を支援し、ウィリアム・グリフィスの死後には『カルカッタ博物学雑誌』の発行継続を支援し、グリフィスの乾燥標本の保全にも貢献しました。
引退と晩年
1853年に引退してイギリスに戻ったワイトは、レディング近くに家を買い、農作業を始めました。最後の公職は、コインバトールの綿花実験農場での仕事でした。彼の収集した4000点近いインドの植物標本は、キューガーデンに寄贈されました。
ワイトの生涯における研究は、3000以上の種を記載し、
ジョセフ・ダルトン・フッカーの『flora of India』には、40の属と500以上の種が新種として確認されました。
ワイトの業績は、インドの植物学研究の発展に大きく貢献し、その功績は今日でも高く評価されています。
主な著作
Spicilegium Neilgherrense (1846-1851)
Illustrations of Indian Botany (1840-1850)
Icones Plantarum Indiae Orientalis (1838-1853)
Prodromus Florae Peninsulae Indiae Orientalis (共著, 1834)
参考資料
Curtis' Botanical Magazine. 1931. Dedications and Portraits 1827-1927. Compiled by Earnest Nelmes and Wm. Cuthbertson .London: Bernard Quaritch Ltd.
Gardener's Chronicle. 1872. The Late Dr. Robert Wight , F.R.S. vol. 50, no. 22.
Gray, Asa. 1873. Scientific Papers. American Journal of Science and Arts 5, ser. 3.
King Sir George. 1899. The Early History of Indian botany. Journal of Botany 37, no. 443.