ロブサン・テンジン

サムドン・リンポチェ5世、ロブサン・テンジンは、1939年にチベット東部で生まれました。5歳でサムドン・リンポチェ4世の生まれ変わりと認定され、僧院の院主となりました。その後、ラサのデプン僧院で仏教の修行を積みますが、1959年の中国によるチベット侵攻により、ダライ・ラマ14世と共にインドへ亡命せざるを得なくなりました。

インドでは、チベット人学校で教師として働き、その後、高等チベット学中央研究所で学院長や理事を務めました。1991年には亡命チベット代表者議会の議員に指名され、議長にも選出されています。2001年には、亡命政府初の公選による首相（カロン・ティパ）に選ばれました。これはダライ・ラマ14世の提唱によるもので、チベット人が自ら指導者を選ぶべきであるという考えに基づいています。

首相としての任期中、リンポチェはチベットの自治権を訴え、中国政府との交渉を目指しました。彼はまた、情報・国際関係省や公安省などの大臣も兼任し、チベットの国際的な認知度向上に尽力しました。2006年に再選を果たし、内務省大臣も兼務しました。

サムドン・リンポチェの首相としての任期は2011年まででしたが、亡命チベット人社会からの信頼は非常に厚く、3選を求める声も多くありました。しかし、彼は「原則を変えるべきではない」として、続投を拒否しました。その信念と謙虚な姿勢は、多くの人々に感銘を与えました。後任にはハーバード大学研究員のロブサン・センゲが就任しました。

「ロブサン・テンジン」は彼の本名であり、「サムドン・リンポチェ」は宗教的な称号です。「リンポチェ」はチベット語で「大切な人」を意味し、多くの僧侶が使用する称号です。英語圏や日本のメディアでは「リンポチェ」を姓と誤解されることもありますが、これは正しくありません。しかし、リンポチェ自身はそのような誤解を容認しているとも言われています。

サムドン・リンポチェは、チベット仏教の指導者として、また政治家として、多くの人々に影響を与え、チベットの平和と自由を求める運動に大きく貢献しました。その知性と誠実さは、多くの人々の尊敬を集めています。

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