ロベルト・ブンゼン

ロベルト・ブンゼン：19世紀を代表する化学者

ロベルト・ヴィルヘルム・ブンゼン (1811年3月31日 – 1899年8月16日) は、ドイツの化学者として、その名を知らない人はいないでしょう。ブンゼンバーナーという名で広く知られる改良バーナーを用いた実験、そして分光学における画期的な発見で、化学史に大きな足跡を残しました。彼の生涯と研究成果について見ていきましょう。

激動の研究生活

ゲッティンゲン大学卒業後、ブンゼンはヨーロッパ各地を旅して研究を続けました。講師、教授職を歴任し、カッセル工業専門学校、マールブルク大学、ブレスラウ大学を経て、1852年にはハイデルベルク大学の化学教授に就任しました。

彼の研究生活は決して平坦ではありませんでした。カコジルの研究中にヒ素中毒で生死を彷徨い、爆発事故で片目を失明するなど、危険と隣り合わせの研究生活を送りました。しかし、そのような困難にも屈することなく、彼は常に探究心と情熱を持って研究に取り組んでいました。

ハイデルベルク大学では、数多くの優秀な弟子を育てました。ロータル・マイヤー、アドルフ・フォン・バイヤー、フリードリヒ・バイルシュタイン、ヴィクトル・マイヤー、そして後にノーベル賞を受賞するヘイケ・カメルリング・オネスなど、化学史に名を刻む多くの科学者たちが彼の指導を受けました。さらに、ドミトリ・メンデレーエフもブンゼンの下で学び、後の周期表作成に繋がる経験を積んでいます。

画期的な発明と発見

ブンゼンの業績は多岐に渡ります。1841年には、従来の白金電極に代えて炭素電極を用いたブンゼン電池を発明しました。この電池は電気分解に用いられ、マグネシウムなどの単離に貢献しました。また、ヘンリー・ロスコーとの共同研究では、水素と塩素から塩化水素が生成される際の法則性を明らかにし、「ブンゼン-ロスコーの法則」として知られています。

さらに重要な業績として、1853年に発見した「ブンゼン反応」があります。この反応は、二酸化硫黄が水の存在下でヨウ素によって定量的に硫酸に酸化される反応で、現在でもカールフィッシャー滴定などに利用されています。原子炉における水素生成反応への応用も検討されているなど、現代化学においても重要な反応です。

そして、彼の最も有名な業績は、グスタフ・キルヒホフとの共同研究による分光学的研究でしょう。ブンゼンバーナーを用いた分光分析によって、1860年にはセシウム、1861年にはルビジウムという新たな元素を発見しました。これは、分光学が化学分析に強力なツールとして活用できることを示す、画期的な発見でした。

ブンゼンは、火山ガスの分析など、地球化学の分野にも貢献しています。また、氷熱量計や蒸気熱量計などの精密な測定機器も発明し、実験化学の進歩にも大きく寄与しました。

数々の栄誉

ブンゼンの業績は高く評価され、コプリ・メダル、デービー・メダル、ヘルムホルツ・メダル、アルバート・メダルなど、数々の賞を受賞しました。彼の功績は、記念碑として現在もハイデルベルクに残されています。

ロベルト・ブンゼンは、実験技術の革新、新たな元素の発見、そして多くの優秀な科学者を育成するなど、19世紀の化学の発展に多大な貢献をしました。彼の研究精神と探究心は、現代の科学者たちにとっても大きな刺激を与え続けています。

もう一度検索