ロベルト・マッタ

ロベルト・マッタ：シュルレアリスムを彩ったチリ出身の画家

ロベルト・アントニオ・セバスチャン・マッタ・エチャウレン。1911年11月11日、チリ・サンティアゴに生まれ、2002年11月23日、イタリアで亡くなった画家です。ロベルト・マッタ、あるいは単にマッタの名前で広く知られています。彼の血統にはバスク、スペイン、フランスのルーツが流れています。

当初は建築家を志し、サンティアゴで建築の教育を受けました。しかし、建築家としての道に幻滅し、1933年、彼は人生を変えるためパリへと旅立ちます。この決断が、彼の芸術家としての道を決定づけることになります。

パリで、マッタは運命的な出会いを果たします。ルネ・マグリット、サルバドール・ダリといったシュルレアリスムの巨匠たち、そしてアンドレ・ブルトン、ル・コルビュジエといった当時の文化界を代表する人物たちとの交流は、彼の芸術に大きな影響を与えました。特にブルトンの推薦によって、彼はシュルレアリスム運動の中核メンバーに加わることになります。

1938年頃からは活動の拠点をアメリカ合衆国に移し、数多くの油絵作品を発表しました。この時代の代表作として「心理学的形態 (1938年)」、「夜の侵入 (1941年)」などが挙げられます。第二次世界大戦下のアメリカで創作活動を続け、1948年には再びヨーロッパへと渡り、フランスを拠点に活躍しました。

彼の作品は、シュルレアリスムの精神を継承しつつも、独自の世界観を構築しています。複雑でダイナミックな構図、鮮烈な色彩、そして深遠な精神性を感じさせる表現は、見る者に強烈な印象を与えます。彼の絵画は、現実と非現実の境界を曖昧にし、見る者の想像力を掻き立てる、まさにシュルレアリスムの真骨頂と言えるでしょう。

1995年には、芸術への貢献が認められ、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しました。これは、彼の芸術的功績が国際的に高く評価された証と言えるでしょう。

晩年はイタリアで過ごしました。2002年、イタリアのチヴィタヴェッキアでその生涯を閉じました。しかし、彼の作品は、今もなお世界中で人々の心を魅了し続けています。

マッタの芸術は、シュルレアリスムという枠にとらわれない、独自性を強く持つものです。彼の息子には、アーティストとして知られるゴードン・マッタ＝クラークと、音楽家のラムンチョ・マッタがいます。

主な作品

無題（パサヤ）（1935年）
心理学的形態（1938年、同名の作品が複数ある）
ダークライト（1940年）
夜の侵略（1941年）
地獄の季節（1978年）
ホメロス IV『拠点』（1983年）
* ルゥ・デュ・フゥ（1991年）

マッタの作品は、彼の複雑な内面世界と、時代の変動を反映したものであり、私たちに深い問いを投げかけてくれます。彼の芸術は、これからも多くの人々にインスピレーションを与え続けることでしょう。

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