ロベール1世 (フランドル伯)

ロベール1世の生涯：戦乱と政治の渦の中で

ロベール1世（1035年頃 - 1093年10月13日）は、11世紀後半のフランドル伯であり、その生涯は激動の時代を象徴しています。彼はフランドル伯ボードゥアン5世の次男として生まれ、兄のボードゥアン6世が伯位を継承した後、甥のアルヌール3世との間でフランドル伯位を巡る激しい争いを繰り広げました。

若年期とホラントでの摂政

ロベールは、父ボードゥアン5世とアデル・ド・フランスの間に生まれました。兄のボードゥアン6世がフランドル伯位を継ぎ、姉のマティルダはノルマンディー公ギヨーム2世（後のイングランド王ウィリアム征服王）に嫁ぎました。

1063年、ロベールはホラント伯妃ゲルトルート・フォン・ザクセンと結婚しました。この結婚は父の知らないところで進められましたが、最終的には認められました。彼は義理の息子のホラント伯ディルク5世の摂政としてホラントの統治に関わり、「フリース人伯」とも呼ばれるようになりました。ロベールとゲルトルートの間には、後のフランドル伯ロベール2世、デンマーク王妃アデル・ド・フランドル、ロレーヌ女伯ジェルトリュードを含む6人の子供がいました。

ロベールは、1060年代にフランドル伯位の主張を放棄する宣誓を2度行っています。1度目は父ボードゥアン5世の前で、2度目は兄ボードゥアン6世の前で行われました。ボードゥアン6世は亡くなる際、長男アルヌール3世にフランドルとエノーを遺贈し、アルヌールが成人するまで母リシルドが摂政を務めることになりました。

フランドル伯位の獲得とカッセルの戦い

ロベールは、過去の誓いを破り、アルヌール3世のフランドル伯位継承に異議を唱えました。彼は支持者を集め、フランドル伯位の獲得を決意。リシルドはフランス王フィリップ1世にロベールの動きを訴えましたが、ロベールは王の命令を無視し、リシルドとの戦いを続けました。フィリップ王は軍を派遣し、ブローニュ伯やサン＝ポル伯らもこれに参加しました。さらに、ロベールの妹マティルダが派遣したとされるノルマン人部隊も加わりました。

1071年2月22日、カッセルで両軍は激突。ロベール軍はフランス連合軍を打ち破り、アルヌール3世は戦死しました。この勝利により、ロベールはフランドル伯位を確立しました。一方、リシルドの息子ボードゥアンはエノー伯となり、ロベールに対する抵抗を続けました。

カッセルの戦い後、フランス王フィリップ1世はロベールに対抗しましたが、最終的には講和を結びました。この講和の一環として、ロベールの義理の娘ベルト・ド・オランドがフィリップ王に嫁ぎ、両国の関係は強化されました。また、フランス王室に譲渡されていたコルビもロベールによって返還されました。

フランドル伯としての統治と外交

カッセルの戦いの後も、リシルドとボードゥアンはロベールに挑み続けましたが、ロベールは彼らを打ち破り、フランドル伯としての地位を不動のものとしました。フランドルは、ウィリアム征服王に敵対する勢力の亡命先となり、1075年にはエドガー・アシリングが、1078/1079年にはウィリアム王の息子ロベール短袴公がフランドルに逃れてきました。また、ロベールはデンマーク王スヴェン2世のイングランド遠征を支援し、娘のアデルをデンマーク王クヌーズ4世に嫁がせました。

1085年には、ロベールとクヌーズ4世はイングランドへの大規模な海上攻撃を計画しましたが、クヌーズの暗殺により中止されました。また、ホラントでは、義理の息子ディルク5世の権利を守るために、下ロートリンゲン公ゴットフリート4世やユトレヒト司教ウィレム1世と争いました。ゴットフリート4世とウィレム1世が亡くなった後、ロベールとディルクは反撃し、ホラントの領土を回復しました。

教会との関係

ロベールは、ローマ教皇グレゴリウス7世との関係で、テルアンヌ司教との対立に巻き込まれました。ロベールがローマと対立する司教を支持したため、一時破門されましたが、後に解除されました。グレゴリウス7世はロベールを再び破門しようと試みましたが、それは実現しませんでした。

また、ロベールはランスでの地方評議会でフリース人司教たちと対立しました。聖職者への賦課金に対して司教らが反発し、最終的にはロベールが徴収済みの金銀宝物を返還することで和解しました。

晩年とエルサレム巡礼

1086年、ロベールはエルサレムへの巡礼に出発し、帰還途中にビザンツ帝国に立ち寄りました。そこで、彼は皇帝アレクシオス1世コムネノスを支援し、セルジューク軍との戦いで活躍しました。その後、ロベールは1093年10月13日に亡くなりました。

ロベール1世の生涯は、戦乱と政治的駆け引きに彩られていましたが、その統治はフランドルの歴史において重要な一章を刻みました。

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