ロベール3世・ダルトワ

ロベール3世・ダルトワ：運命に翻弄されたフランス貴族

ロベール3世・ダルトワ（1287年 - 1342年）は、中世フランスの貴族であり、アルトワ伯の継承権を主張したことで知られています。フランス国王フィリップ6世の義兄弟でありながら、最終的にはイングランドに亡命し、百年戦争の遠因を作った人物として、歴史に名を残しました。

アルトワ伯位を巡る争い

ロベール3世は、アルトワ伯ロベール2世の息子フィリップ・ダルトワの子として生まれました。しかし、1298年に父フィリップが亡くなり、1302年に祖父ロベール2世が戦死すると、アルトワ伯位はロベール3世ではなく、祖母マオー（マティルド）が継承することになります。これは、アルトワ地方の慣習によるものでしたが、男系優先の考え方が一般的であった当時、ロベール3世はこれに不満を抱き、1309年と1318年に伯位継承を求めて訴訟を起こしました。しかし、いずれも敗訴に終わっています。

フランス王家との関係

1318年、ロベール3世はフランス王フィリップ4世の姪であるジャンヌ・ド・ヴァロワと結婚しました。1328年に妻の異母兄フィリップ6世がフランス王に即位すると、ロベール3世は重用され、ボーモン・ル・ロジェ伯に叙せられます。しかし、1329年にマオーが亡くなると、再びアルトワ伯位を主張し始め、偽の遺言状を作成した疑惑が浮上。さらに、マオーの跡を継いだジャンヌ（フィリップ5世王妃）の毒殺に関与した疑いまでかけられ、ロベール3世は謀反人として追われる身となったのです。

イングランドへの亡命と百年戦争

フランスを追われたロベール3世は、各地を転々とした後、1336年にイングランドに亡命し、エドワード3世の庇護を受けました。エドワード3世は、フランス王フィリップ6世がスコットランド王デイヴィッド2世を保護していることに不満を抱いており、ロベール3世を歓迎し、リッチモンド伯を与えました。

復讐に燃えるロベール3世は、エドワード3世に対し、フランス王位を主張するように働きかけ、フランス王家や貴族の内情に関する情報を提供することで、イングランドの対フランス戦略に貢献。これが、百年戦争の引き金の一つになったと言われています。

百年戦争が勃発すると、ロベール3世はエドワード3世と共にフランスへ侵攻。1340年のスロイスの海戦での勝利後には、アルトワ奪還を目指しましたが、失敗に終わりました。その後、ブルターニュ継承戦争に参戦しますが、1342年にヴァンヌで戦死。波乱に満ちた生涯を閉じました。

子女

妻ジャンヌ・ド・ヴァロワとの間には、以下の6人の子女がいました。

ルイ（1320年 - 1329年）
ジャン（1321年 - 1387年） - ウー伯
ジャンヌ（1323年 - 1324年）
ジャック（1325年 - 1347年以降）
ロベール（1326年 - 1347年以降）
シャルル（1328年 - 1385年） - ロングヴィル伯、ペズナ伯

ロベール3世・ダルトワは、アルトワ伯位を巡る争いから、フランス王家との対立、そしてイングランドへの亡命という、激動の人生を送りました。彼の行動は、百年戦争の遠因の一つとなり、ヨーロッパの歴史に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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