ロメオ・ダレール

ロメオ・アントニウス・ダレールは、1946年オランダ生まれのカナダ人軍人・政治家です。彼は、1994年のルワンダ虐殺当時、国際連合ルワンダ支援団（UNAMIR）の司令官を務めました。

生い立ちと軍歴

ダレールは、カナダ軍人の父とオランダ出身の母の間に生まれ、1964年にカナダ陸軍に入隊しました。1993年、彼はルワンダの平和維持軍司令官として派遣され、アフリカへ派遣される初のカナダ人司令官となりました。ルワンダ紛争においては、1993年8月に締結されたアルーシャ協定に基づき、同年11月に現地に到着しました。

ルワンダ虐殺とダレールの苦悩

ダレールの着任前、国連はルワンダでジェノサイドの可能性を示唆する報告書を作成していましたが、その情報は彼に伝えられませんでした。1994年1月、ダレールは匿名の情報提供者から、フツ過激派による虐殺計画を知らされます。彼は国連に対し、平和維持軍の増強と過激派の武器没収を提案しましたが、UNAMIRにはそのような権限がないとして却下されました。その後、アメリカ、フランス、ベルギーの大使にも情報を伝えましたが、状況は改善せず、ダレールは要人の暗殺や民兵の武装を傍観するしかありませんでした。

1994年4月、ルワンダ虐殺が始まり、ダレールは平和維持軍本部が攻撃される中、虐殺の惨状を目の当たりにしました。彼はその後も駐留を続けましたが、虐殺終結後の1994年8月に司令官を辞任して帰国しました。辞任の理由は、過労とストレスにより指令書を正確に書けなくなり、自暴自棄になりつつあったためとされています。帰国後、ダレールは心的外傷後ストレス障害（PTSD）と診断され、2000年には自殺未遂を起こしました。

その後の活動

2003年、ダレールはルワンダでの体験を綴った著書「Shake Hands with the Devil」を出版し、カナダでベストセラーとなりました。2004年には、虐殺事件から10年後の追悼式典に出席するためルワンダを再訪。2005年には、ケベック州からカナダ上院議員に選出され（後に離党）、2006年にはダルフール紛争に関する集会を開催しました。現在は、紛争解決と平和構築のための活動に尽力し、平和維持活動の教育機関や大学で講師を務めています。

ルワンダ虐殺をめぐる批判

ルワンダの現大統領であるポール・カガメは、ダレールを含む国連や国際社会が虐殺を阻止できなかったとして批判しています。また、2004年の追悼式典では、虐殺当時殺害されたベルギー人兵士をめぐり、ベルギーの政治家から追及を受けました。

平和維持活動への提言

ダレールは、国連の常任理事国だけでなく、カナダ、日本、ドイツ、北欧、オランダ、インドなどの国々が平和維持活動に積極的に関与すべきだと主張しています。特に、ミドルパワーの連携を提唱し、冷戦後の平和維持活動においては、国連憲章第6章にある「紛争の平和的解決」だけでは不十分であると考えています。地方復興チームを評価しつつも暫定的な手段とみなし、カナダを中心とする干渉と国家主権に関する国際委員会（ICISS）が国連に提案した「保護する責任」の概念を支持しています。

ダレールの経験は、平和維持活動の限界と、国際社会の責任について深く考えさせられるものです。

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