ロロ・メイ

ロロ・メイ：アメリカにおける実存心理学のパイオニア

ロロ・メイ（1909年4月21日-1994年10月22日）は、20世紀を代表するアメリカ合衆国の心理学者です。臨床心理学者としての実績に加え、アメリカにおける実存心理学の開拓者として知られています。カール・ロジャーズやエイブラハム・マズローらと共に、人間性心理学を代表する人物の一人として高く評価されています。

困難な生い立ちと学問への道

オハイオ州エイダに生まれたメイは、両親の離婚や姉妹の精神疾患といった困難な幼少期を経験しました。しかし、そうした逆境を乗り越え、ミシガン州立大学を経て、1930年にオベリン大学を卒業。その後、ギリシャで教職に就き、英語を教えながら、ウィーンでアルフレッド・アドラーのセミナーにも参加するなど、積極的に学び続けました。

1938年に帰国したメイは、ユニオン神学校に入学。そこで出会った神学校教授のパウル・ティリッヒとは、生涯にわたる深い友情を育みました。心理学への関心を深めたメイは、会衆派教会の牧師職を辞し、コロンビア大学へ進学。博士号取得を目指して研究に没頭していましたが、1940年代半ばには結核のため1年半もの療養生活を送ることになります。この療養期間中、キェルケゴールやフロイトの著作を深く研究したことが、彼の代表作である『不安の意味』の基礎となりました。1949年、コロンビア大学教育大学院で臨床心理学の博士号を取得しました。

実存心理学の確立と多様な活動

その後、エーリッヒ・フロムらが設立したウィリアム・アランソン・ホワイト精神分析研究所で臨床に携わりながら、精力的に著作活動を展開しました。1971年には、カール・ロジャースやマズローらと共にサンフランシスコの人間性心理学研究所（後にセイブルック大学院、研究センター）を設立。実存分析派の大家として、臨床活動だけでなく、ハーバード大学、イェール大学、ニューヨーク大学などでも教鞭をとり、多くの学生に影響を与えました。

主要な著作と影響

メイの著作は、アメリカでは『愛と意志』『創造への勇気』が特に有名です。日本でも多くの著作が翻訳されており、『ロロ・メイ著作集』全6巻が刊行されています。彼の著作は、不安、愛、意志、創造といった、人間存在の根源的な問題を深く探求したものであり、心理学のみならず、哲学、神学、芸術など、幅広い分野に影響を与えています。主な著作には以下のものがあります。

『不安の意味』(The Meaning of Anxiety):不安の本質を深く探求した初期の代表作
『失われし自我を求めて』(Man's Search for Himself):人間のアイデンティティと自己実現について論じた作品
『愛と意志』(Love and Will):愛と意志の相互関係を分析し、人間関係のあり方を問い直した著作
『創造への勇気』(The Courage to Create):創造性と人間の可能性について考察した、実存心理学を代表する名著

1994年、カリフォルニア州ティブロンの自宅で死去。85歳でした。

まとめ

ロロ・メイは、困難な生い立ちを克服し、実存心理学という新たな分野を開拓した、20世紀を代表する心理学者の一人です。彼の業績は、現代社会においても、人間存在の根源的な問いと向き合う上で、重要な示唆を与え続けています。彼の著作は、現代の人間が抱える様々な問題を考える上で、今もなお貴重な指針となっているのです。

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