ロワー・ハット

ロワー・ハット市 (Lower Hutt / Awakairangi)

ニュージーランド北島、ウェリントン地方に位置するロワー・ハット市は、統計上ウェリントン都市圏の一部とされています。英語名はLower Hutt、マオリ語ではAwakairangiと呼ばれています。国内の主要都市としては人口が7番目に多く、2018年6月時点では約10万6千人が暮らしています。市全体の面積は約377平方キロメートルに及び、特にハット渓谷の低地一帯を占めています。都市の中心部はウェリントン湾沿いの約135平方キロメートルの範囲に広がっており、南側はニュージーランドの首都ウェリントンと、北側はアッパー・ハット市と隣接しています。

歴史

ヨーロッパ人がこの地域に定住する以前、ハット渓谷の広範囲は深い森に覆われ、ハット川の河口周辺は広大な湿地が広がっていました。先住民であるマオリの人々は、主に食料資源が豊富なウェリントン湾の沿岸部に生活の場を築いていました。

ヨーロッパ人の本格的な移住は、1839年9月20日にニュージーランド会社の調査隊が帆船「トーリー号」で到着したことから始まりました。彼らはこの地の調査を行い、その後の入植への道を開きました。続いて1840年1月22日には、帆船「オーロラ号」に乗った約150人の移住団が到着し、彼らはハット川河口付近に最初のヨーロッパ人入植地を築きました。入植者たちは、この新しい土地で生活基盤を整備し、やがて国内で初めてとなる新聞社や銀行を開設するなど、地域の発展の礎を築いていきました。都市の名前である「ロワー・ハット」は、ニュージーランド会社の創設者の一人であり理事長でもあったウィリアム・ハット氏の功績を記念して名付けられました。

しかし、初期の入植地はいくつかの困難に直面しました。特に1840年3月にはハット川が大洪水に見舞われ、入植地は大きな被害を受けました。この洪水のため、多くの入植者が、より安全な高台である現在のウェリントンの中心部にあたるソーンドンへと移住せざるを得なくなりました。

その後も歴史的な出来事が続きます。1846年には、この地に留まったヨーロッパ人入植者とマオリの人々との間で、土地利用などを巡る紛争（ハット渓谷紛争）が発生しました。これは、異なる文化や権利主張が衝突した複雑な出来事でした。

自然環境もこの地の地形に大きな影響を与えています。特に1855年に発生した大規模なワイララパ地震は、ハット渓谷低地の広範囲に及ぶ沼地を劇的に隆起させ、新たな陸地を生み出しました。この地震によって地表に現れた断層線は、現在も地形として確認することができます。

交通インフラの整備も地域の発展に貢献しました。海からのアクセスを支援するため、1859年にはペンキャローヘッドにニュージーランドで初めて常設された灯台が建設されました。これは船舶の安全航行を確保する上で重要な役割を果たしました。陸上交通では、ニュージーランドの首都であるウェリントンからの鉄道網が拡充され、1874年4月にはローワー・ハット駅まで開通しました。さらに、その2年後には鉄道路線は北方のハット川西岸にあるシルバーストリームまで延伸され、地域内の移動や物流がより円滑になりました。

地理と気候

地理的には、ロワー・ハットは豊かな自然に囲まれたハット渓谷の低地を主な市域とし、美しいウェリントン湾に面しています。これにより、都市部でありながら自然景観にも恵まれた環境が特徴です。気候は湿潤な海洋性気候に属しており、年間を通じて比較的穏やかです。夏は暖かく過ごしやすい気候となり、冬も極端な寒さになることは少なく、比較的穏やかな気候に恵まれています。

国際交流

ロワー・ハット市は、国際的な友好関係を深めることにも力を入れており、現在5つの海外都市と姉妹都市関係を結んでいます。これらの姉妹都市は以下の通りです。

アメリカ合衆国テキサス州ラレド市（2011年締結）
日本大阪府箕面市（1995年締結）
中華人民共和国江蘇省泰州市（2008年締結）
アメリカ合衆国アリゾナ州テンピ市（1981年締結）
* 中華人民共和国陝西省西安市（2000年締結）

これらの姉妹都市との交流を通じて、文化、教育、経済など様々な分野での相互理解と友好関係を促進しています。

もう一度検索