ロンドン・スコティッシュ・フットボールクラブ
「
ロンドン・スコティッシュ・フットボールクラブ(London Scottish Football Club)」は、
イングランドを拠点とする歴史ある
ラグビーユニオンチームです。
イングランドの
ラグビー・フットボール・ユニオン(RFU)と、スコットランドラグビー協会(SRU)の両方に加盟しているのが特徴です。現在はRFUチャンピオンシップ(
イングランドラグビーの2部リーグ)に所属しています。
本拠地は、
ロンドン郊外のリッチモンドにあるアスレティック・グラウンドです。このグラウンドは、同じく歴史のあるリッチモンドFCと共用しています。
創設と初期
クラブの歴史は1878年に遡ります。その年の初頭、当時セント・アンドリューズ・ローヴァーズFCに所属していた3人のスコットランド人選手、ジョージ・グラント、ニール・マックグラシャン、ロバート・アーノットは、スコットランド出身者のための新しいクラブ設立を決意しました。彼らが送った呼びかけは大きな反響を呼び、特に
ロンドン・スコティッシュ連隊がこの構想に強い関心を示しました。そして、1878年4月10日、
ロンドン市内のパブ「The Queen's Head」にて、
ロンドン・スコティッシュFCが正式に設立されました。当初はブラックヒース・コモンでプレーしていましたが、後に現在のホームグラウンドであるリッチモンド・アスレティック・グラウンドへと移りました。
ロンドン・スコティッシュは、本国を離れて
ロンドンで活動する「エグザイルズ(異郷流民)」によって作られた最初のラグビークラブとして知られています。しかし、「開かれた」クラブ、すなわちスコットランド系以外の選手も受け入れるようになったのは1996年と、他のエグザイルズクラブ(
ロンドン・アイリッシュや
ロンドン・ウェルシュ)に比べて遅く、最後となりました。
アマチュア時代には、1974年にRFUクラブ競技会の決勝に進出する健闘を見せましたが、当時の強豪コヴェントリーに惜しくも敗れました。また、伝統あるミドルセックスセブンズ大会では特に強く、1937年、1960年から1963年にかけての4連覇を含む、複数回の優勝を飾っています。スコットランドで開催されるメルローズセブンズでも、創設期から活躍を見せていました。
プロ化、挑戦、そして再建
1996年、クラブはプロ化への道を歩み始めました。実業家のトニー・ティアークスがクラブを買収し、プロリーグでの成功を目指しました。1998年の夏にはプレーオフを制し、
イングランドラグビーの最上位リーグであるプレミアシップへの昇格を果たしました。ティアークス氏は、トゥープ・メモリアル・グラウンドをハーレクインズや
ロンドン・ブロンコズと共用するという、運営上の困難を伴う決断を下しました。
1998-99シーズンは、
ロンドン・スコティッシュが唯一プレミアシップで戦ったシーズンとなりました。限られた戦力ながら、チームは降格圏を回避する12位でシーズンを終えましたが、シーズン途中から運営上の問題が表面化します。ティアークス氏はクラブの運営から手を引き、プレミアシップの権利を売却することも検討されました。最終的に、プロクラブとしての
ロンドン・スコティッシュ・ラグビーは1999年に会社管理手続きに入り、同じく経営難に陥っていたリッチモンドと共に、名目上
ロンドン・アイリッシュに統合される形となりました。
しかし、クラブの灯が消えることはありませんでした。元々のアマチュアクラブが、RFUによって9段階降格された
イングランドの最下位ディビジョンから再出発を果たしたのです。クラブは不屈の精神で戦い続け、およそ10シーズンをかけて7段階の昇格を達成し、2011-12シーズンにはかつて所属したRFUチャンピオンシップ(2部)への復帰を果たしました。そして、2012-13シーズンからは、フルタイムのプロクラブとして再始動しています。
セブンズでの輝かしい実績
ロンドン・スコティッシュは、15人制ラグビーだけでなく、ラグビーセブンズの分野でも顕著な実績を残しています。前述のミドルセックスセブンズで7回の優勝を誇るほか、セブンズ発祥の地であるスコットランドのメルローズセブンズでは3回、ロズリンパーク・
ロンドンFloodlitセブンズでも7回優勝するなど、国内外の主要なセブンズ大会で多くのタイトルを獲得しています。セブンズは、クラブの長い歴史において常に重要な位置を占めてきました。
タイトル一覧
ロンドン・スコティッシュは、その歴史の中で数多くのタイトルを獲得しています。
ラグビーユニオン(リーグ優勝など)
カーリッジリーグ・ディビジョン3(3部)優勝: 1989-90
カーリッジリーグ・ナショナルディビジョン2(2部)優勝: 1991-92
ロンドン・ディビジョン4ノースウェスト(8部)優勝: 2001-02
ロンドン・ディビジョン3ノースウェスト(7部)優勝: 2002-03
ロンドン・ディビジョン2ノース(6部)優勝: 2003-04
ロンドン・ディビジョン1(5部)優勝: 2006-07
ナショナルリーグ3サウス(4部)優勝: 2008-09
ナショナルリーグ1(3部)優勝: 2010-11
セブンズ大会優勝
メルローズセブンズ 優勝: 1962, 1965, 2019
ホイクセブンズ 優勝: 1965
ケルソセブンズ 優勝: 1991
Ross Sutherlandセブンズ 優勝: 1990
Glasgow Academicalsセブンズ 優勝: 1979, 1989
Haig Trophyセブンズ 優勝: 1980
Stirlingセブンズ 優勝: 1988
ミドルセックスセブンズ 優勝: 1937, 1960, 1961, 1962, 1963, 1965, 1991
ロンドン・スコティッシュ・ライオンズ(アマチュアチーム)
* ハーツ/ミドルセックス2(10部)優勝: 2018-19
プロ化と管理手続きという困難を乗り越え、下位リーグからの驚異的な復活を遂げた
ロンドン・スコティッシュは、
イングランドとスコットランド両方のラグビー界に根差した、ユニークな歴史を持つクラブとして、RFUチャンピオンシップでの戦いを続けています。