ラグビー・フットボール・ユニオン

ラグビー・フットボール・ユニオン (RFU)

ラグビー・フットボール・ユニオン（Rugby Football Union、略称RUまたはRFU）は、イングランドにおけるラグビーユニオン競技全体を統括する主要な運営団体です。イングランドラグビー協会とも呼ばれます。

この組織は1871年に設立されました。その歴史は、1863年に設立されたフットボール・アソシエーション（FA、現在のサッカー協会）から、ラグビー形式のフットボールを推進するクラブが独立したことに始まります。国際的なラグビー統括団体である国際ラグビーフットボール評議会（IRFB、現在のワールドラグビー）が1886年に設立される以前は、RFUが実質的に国際的な統括機能を担っていた時期もありました。このため、設立当初から組織名に「イングランド」という特定の地域名を含まず、「ラグビー・フットボール・ユニオン」という名称を用いています。

RFUの主な活動内容は多岐にわたります。イングランド国内におけるラグビーユニオンのルール策定、競技会の開催管理、そして国内全体への普及活動を行います。また、男女のイングランド代表チームを組織し、国際試合への参加や開催を運営しています。さらに、選手だけでなく、レフリーやコーチ、運営スタッフといったラグビーに関わるあらゆる人材の育成にも力を入れています。本拠地は、ロンドンの郊外にある世界的に有名なラグビー専用スタジアム、トゥイッケナム・スタジアムです。RFUはイングランド国内に2,000を超える加盟クラブを持ち、登録者数は250万人以上に上る大規模な組織です。

その歴史において、1890年には国際ラグビーフットボール評議会（IRFB）に正式に加盟しました。また、1895年には、特にイングランド北部を中心に、選手への報酬を巡る対立からRFUから多くのクラブが脱退し、ノーザン・ラグビー・フットボール・ユニオン（現在のラグビー・フットボール・リーグ）が設立されるという、大きな分裂も経験しています。

近年、イングランド代表チームの応援歌である『Swing Low, Sweet Chariot』の使用に関する議論が注目を集めています。この歌はワールドカップや様々な国際試合で、観客によって歌われ、ハーフタイムには運営側によって流されることもあります。しかし、2020年6月、ジョージ・フロイド氏の死をきっかけとした「ブラック・ライブズ・マター（Black Lives Matter）」運動の高まりを受けて、RFUはこの歌の応援歌としての使用を禁止することを検討していると発表しました。これは、この歌の起源がアメリカの黒人奴隷によって作られた鎮魂歌であることに由来します。当時、歌詞には奴隷がカナダへ逃亡する際の「暗号」が隠されていたとする説も存在します。

この歌がラグビーの応援歌として定着したのは比較的最近のことです。20世紀初頭から知られるこの曲は、多くのミュージシャンにカバーされています。ラグビーとの繋がりとしては、1981年の映画『炎のランナー』にちなんで、俊足の黒人ウィング選手マーティン・オファイア氏に「Chariots」というニックネームがついたことが挙げられます。1987年には、トゥイッケナムで行われたラグビーリーグの試合で、オファイア氏が出場した際に観客がこの歌を歌ったとされています。ラグビーユニオンにおいては、1988年3月のアイルランド代表戦で、イングランドサポーターが歌い始めたところ、イングランド代表が劇的な逆転勝利を収めたことから、勝利を呼ぶ歌として定着しました。1991年のワールドカップではイングランド代表のテーマ曲となり、シングルCDも発売されています。

応援歌の使用禁止検討に対しては、様々な意見が表明されました。元イングランド代表選手であるブライアン・ムーア氏やヘンリー王子は、ラグビーの場で歌うべきではないとの立場を示しました。一方、ニックネームの由来となったマーティン・オファイア氏は、この歌を残すことが人種差別や黒人史について学ぶ機会になると主張し、当時のボリス・ジョンソン首相も禁止に反対する意向を示しました。女子イングランド代表として活躍したマギー・アルフォンシ氏も、RFUが検討すること自体は評価しつつも、禁止には賛成できないと述べています。ワールドカップ2023の試合会場でもこの歌は歌われ続けています。2024年10月には、現役の黒人代表選手であるマロ・イトジェ氏が、この歌の起源を理解したことで個人的にはもう歌わないと表明し、改めて議論が提起されています。2024年10月現在、公式に禁止はされていません。

RFUが統括する主な国内大会には、プレミアシップ、アングロ・ウェルシュカップ、ナショナルトロフィーなどがあります。

トゥイッケナム・スタジアムは、RFUの活動の中心であり、代表戦の他、様々なラグビーの試合やイベントが開催される象徴的な場所です。

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