ロンドン・ブリッジ・スタジオ

ロンドン・ブリッジ・スタジオ（London Bridge Studio）は、アメリカ合衆国ワシントン州シアトルに拠点を置く、歴史あるレコーディングスタジオです。

創設は1985年、リックとラジのパラシャー兄弟が、自身のプライベートスタジオとして設立しました。以来、数多くの著名なアーティストやプロデューサー、エンジニアたちがこのスタジオを訪れ、音楽史に名を刻む作品を生み出してきました。

特に、1980年代後半から90年代にかけて、シアトルで生まれた革新的な音楽ムーブメント、いわゆる「グランジ」の興隆において、このスタジオは中心的な役割を果たしました。マザー・ラブ・ボーン、テンプル・オブ・ザ・ドッグ、アリス・イン・チェインズといった、当時の音楽シーンに大きな影響を与えたバンドたちが、シアトル時代の重要な作品の多くをここで録音しています。

このスタジオの名を一躍有名にしたのは、1991年にリリースされたパール・ジャムのプラチナム・デビューアルバム『Ten』がここで制作されたことです。また、サウンドガーデンの1989年のアルバム『Louder Than Love』も、スタジオに世界的な認知をもたらした初期の重要な作品です。これらの成功により、ロンドン・ブリッジ・スタジオは、単なるレコーディングの場を超え、ある種の音楽文化を象徴する場所となりました。

グランジ全盛期を経て、その後の数十年にわたり、このスタジオは幅広いジャンルのアーティストに利用されています。ブラインド・メロン、キャンドルボックス、アンリトゥン・ロウ、デフォルト、3ドアーズ・ダウンなどが、ここでレコーディングを行いました。

ロンドン・ブリッジ・スタジオの大きな特徴の一つは、その優れた音響設計にあります。著名なスタジオ設計者であるジェフ・ターナー（リトル・マウンテン・スタジオやパインウッド・スタジオなども手がけています）によって設計された空間は、広さ約460平方メートルを誇り、上昇式の天井、強固なウッドフローリング、レンガ壁といった特徴的な構造を持っています。これにより、豊かで自然な「ライブ」な音響特性を実現しています。スタジオ内部には、主要なレコーディングが行われるライブ・ルーム、音響調整を行うコントロール・ルーム、細かい録音に使用されるオーバーダブ用ルーム、そしてリラックスできるキッチン付きのラウンジといった設備が完備されており、多様なニーズに対応可能です。

所有権は設立当初から変遷しています。設立者であるパラシャー兄弟から、2005年9月にジェフ・オットとジョナサン・プラムに引き継がれました。彼らはスタジオを地元および国内の音楽業界向けのレコーディングスペースとして貸し出し、運営を続けました。さらに、従来のバンドやミュージシャンの音楽制作に加え、ビデオ・ゲームやテレビ放送用のオーディオ収録事業にも活動の幅を広げました。その後、2013年にはエリック・リラヴォアが第三のオーナーとして運営に参加しています。

このように、ロンドン・ブリッジ・スタジオは、その優れた設備と音響、そして何よりも歴史的な音楽シーンとの深いつながりによって、今日でも重要なレコーディングの拠点として機能し続けています。

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