ロンドンSS

ロンドンSS：伝説のパンクバンド前夜

ロンドンSSは、1975年にミック・ジョーンズとトニー・ジェイムスによって結成されたイギリスの初期パンク・ロックバンドです。その短い活動期間は、メンバーのオーディションに費やされることが多く、バンドとしての目立った活動は少なかったものの、後にパンクシーンを牽引する多くのミュージシャンが在籍していました。

バンドの遍歴

ミック・ジョーンズ（ギター）とトニー・ジェイムス（ベース）を中心に、ギタリストのブライアン・ジェイムスが準固定メンバーとして参加。他にも、ザ・ハリウッド・ブラッツのメンバーだったマット・デンジャーフィールドや、カジノ・スティールなども在籍していました。

特筆すべきは、数多くの著名ミュージシャンがオーディションに参加したものの、採用されなかったことです。その中には、後にザ・クラッシュのメンバーとなるポール・シムノンやテリー・チャイムズも含まれています。また、トッパー・ヒードンも参加を依頼されたものの、これを断っています。ザ・ダムドのドラマー、ラット・スケイビーズも、自身のバンドと並行してロンドンSSでプレイしていました。さらに、ローランド・ホットもドラマーとして参加し、パンク詩人のパトリック・フィッツジェラルドもオーディションを希望するなど、様々な才能が集結していました。

バンドが公式に録音したのは、ジェイムス、ジョーンズ、(ブライアン) ジェイムス、ホットによるデモのみでした。音楽的には、ストレートなロックンロールや1960年代のリズム・アンド・ブルースのカバーを中心に演奏していましたが、メンバー自身はバンドの演奏に不満を感じていたようです。

短命に終わった活動と、その後の影響

1976年、ホットが脱退すると、ブライアン・ジェイムスとスケイビーズはそれぞれザ・サブテラニアンズ、後にザ・ダムドを結成するために脱退。トニー・ジェイムスは、ビリー・アイドルらとチェルシーを結成し、後にジェネレーションXへと発展させました。そして、ミック・ジョーンズ、ポール・シムノン、テリー・チャイムズは、ジョー・ストラマーと合流し、ザ・クラッシュを結成。その後、チャイムズはトッパー・ヒードンと交代するなど、メンバーチェンジを繰り返しました。

ロンドンSSは、バンドとしての活動期間は短く、目立った実績も残せませんでしたが、そのメンバーたちが後に結成したバンド、ザ・クラッシュ、ザ・ダムド、ジェネレーションXは、いずれもパンクシーンを代表する存在となり、ロンドンSSは、結果として、個々のメンバーの才能が開花する土壌となったと言えるでしょう。

バンド名の由来を巡る議論

バンド名である『SS』は、ナチス親衛隊を連想させるため、当時から物議を醸していました。後にザ・クラッシュがイギリスで最も左翼的なバンドの一つになったこともあり、この問題はミック・ジョーンズを悩ませ続けました。しかし、他のロンドンSSのメンバーは、当時の困窮した状況を反映して「社会保障 (Social Security)」が由来であると主張しました。また、バンド名には、ファシズムへの支持ではなく、言葉の持つ多様性と衝撃度を狙ったという説も存在します。

ロンドンSSは、短命ながらも、その後のパンクシーンに大きな影響を与えた、伝説的なバンドの前身として、その名を刻んでいます。

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