トッパー・ヒードン

トッパー・ヒードン：パンク・ドラムの伝説

ニコラス・ボーウェン・"トッパー"・ヒードン（Nicholas Bowen "Topper" Headon、1955年5月30日 - ）は、イギリス出身のロック・ドラマーであり、パンク・ロックバンド、ザ・クラッシュのメンバーとしてその名を知られています。

生い立ちと初期のキャリア

「トッパー」というニックネームは、ポール・シムノンが名付け親であり、ヒードンに似た漫画のキャラクターに由来します。彼は10代の頃からジャズドラマーとして地元のパブで演奏しており、その経験は後にクラッシュのオーディションを受ける際にも影響を与えました。影響を受けたミュージシャンとして、ビリー・コブハムやバディ・リッチなどのジャズドラマーの名を挙げています。高校卒業後はアルバイトをしながらバンド活動を続け、アメリカのR&Bグループ、テンプテーションズの前座を務めたバンドに在籍していたこともありますが、彼はこの経歴を「テンプテーションズにいた」と偽って語ることもありました。

ザ・クラッシュへの加入と活躍

ロンドンSSがドラマーを募集していた際にミック・ジョーンズと知り合い、これがきっかけでジョーンズが結成したクラッシュに加入しました。ヒードンが加入するまで、クラッシュはアルバム『白い暴動』のレコーディング時にテリー・チャイムズをはじめ、数多くのドラマーを迎えていました。職人気質のドラマーであったヒードンは、当初、一時的な参加としてクラッシュに加入しましたが、バンドの潜在能力に気づき、その計画を放棄します。彼は1978年のアルバム『動乱（獣を野に放て）』、1979年のUS版『白い暴動』に収録された数曲、同年の『ロンドン・コーリング』、1980年の『サンディニスタ!』、そして1982年の『コンバット・ロック』でドラムを演奏しました。また、『サンディニスタ!』収録の「イワンがG.I.ジョーに会う時」と『コンバット・ロック』収録の「ロック・ザ・カスバ」では、リードボーカルも担当しています。これらの楽曲では、作曲、ドラム、ピアノ、ベースの演奏をほとんど彼自身が担当しました。

ジョー・ストラマーは、ヒードンのドラムがバンドの生命線であったと語っています。ヒードンは、力強さとスタミナを兼ね備え、伝統的なロックドラミングに加えて、ファンクやレゲエなど、様々なジャンルにおいてもその才能を発揮しました。

ドラッグ中毒と解雇

しかし、ヒードンのヘロイン中毒は、彼とバンドの間に緊張を生み出しました。1981年末にはヘロイン所持で逮捕され、翌月に予定されていた日本公演（東京・大阪）のために、バンドメンバー全員が日本への入国許可を取り消されるという事態を引き起こしました。彼はコカインも常用しており、ライブ中に照明が落ちた瞬間を見計らって使用していました。これらの問題は彼のドラミングにも影響を及ぼし、バンドは彼に「薬をやめるか、バンドをやめるか」という最後通牒を突きつけました。ヒードンはドラッグをやめることができず、1982年5月10日、コンバットロックツアーの開始とともにバンドを脱退することになりました。バンドはヒードンの脱退理由を「疲労」と発表し、真実を隠しました。

ヒードンの脱退後、クラッシュはツアーのためにオリジナルドラマーのテリー・チャイムズを再び起用しました。その後、ヒードンはジョーンズがクラッシュ脱退後に結成したビッグ・オーディオ・ダイナマイトのドラマー候補として検討されましたが、彼がまだドラッグを断ち切れていなかったため、実現には至りませんでした。

ソロ活動とリハビリ

その後、ヒードンはソロアルバム『ウェーキング・アップ (Waking Up)』（1986年）の制作に集中しました。アルバムからは、「ドラミング・マン (Drumming Man)」、「DuKane Road」、そして自作の「ホープ・フォア・ドナ (Hope for Donna)」を収録した12インチシングルがリリースされました（「ホープ・フォア・ドナ」は、マーキュリー・レコードのサンプラーアルバム『ビート・ランズ・ワイルド』（1986年）にも収録されています）。しかし、このアルバムの後、ヒードンからヘロインを譲り受けた男性が中毒死する事件が発生し、彼は1年3ヶ月の禁固刑に服しました。

ヒードンは、北ロンドンのプライオリー・サイキアトリック・ホスピタルで中毒治療を受けました。この病院は、ドラッグ中毒治療プログラムを持つことで知られています。また、ヘロインの注射針からC型肝炎に感染していましたが、治療の結果、ウイルスは排除され、治癒しました。

ドラッグ中毒からの回復とその後

ヒードンは、ロキュメンタリー『ウェストウェイ・トゥ・ザ・ワールド』のインタビューに応じ、自身のドラッグ常用について率直に謝罪しました。彼は、自分が解雇されていなければ、バンドはもっと長く続き、今も一緒にいられただろうと語りました。しかし、一方で「やり直すチャンスがあるなら、後悔せずにまた同じことをするだろう。俺はそういう奴だから」とも述べています。

クラッシュ解散後、彼の名前を聞く機会は少なくなりましたが、ニューヨークのバンド、ブッシュ・テトラス (Bush Tetras) のプロデュースを担当するなど、音楽活動は続けていました。ジョー・ストラマーの死を知ったのは、パブでのステージを終えた後でした。

ヒードンは、クラッシュの旧メンバーが『ウェストウェイ・トゥ・ザ・ワールド』での再集結の後、ストラマーの死後に再結成を計画したことを嘆くコメントを残しています。

ヒードンは、ストラマーのドキュメンタリー映画『ロンドン・コーリング/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー』のインタビューに応じ、ヘロイン中毒になった経緯やバンド解雇に至るまでの経緯について語りました。また、ロック・ザ・カスバのビデオを見て「誰か（テリー・チャイムズのこと）が俺の場所で俺の曲をやっている」と感じ、ひどく落胆したことが、さらにドラッグに溺れるきっかけになったと語っています。ヒードンのドラッグ中毒が、1年後のジョーンズの解雇、そして1986年のバンド解散の引き金になったとも言われています。

ドラミング・スタイル

ヒードンのドラミングスタイルは、シンプルなバスドラムとスネアのアップダウンビートを強調し、クローズ・ハイハットの装飾でアクセントをつけるという独特なものでした。このスタイルは、「クランプダウン」、「トレイン・イン・ヴェイン」、「ロスト・イン・ザ・スーパーマーケット」などで聴くことができます。特に「トレイン・イン・ヴェイン」でのドラミングは、ロック史上最も重要で独特なビートとして評価されています。

ディスコグラフィー

クラッシュでの楽曲については、クラッシュのディスコグラフィーを参照してください。ヒードンは、1枚のスタジオアルバム、1枚のEP、そして3枚のシングルをソロアーティストとして発表しています。また、忌野清志郎のアルバム『RAZOR SHARP』など、他のアーティストのアルバムにも参加しています。

スタジオアルバム

ウェーキング・アップ (Waking Up)（1986年）

EP

なし

シングル

ドラミング・マン (Drumming Man)
DuKane Road
* ホープ・フォア・ドナ (Hope for Donna)

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