ロンバルディア同盟

ロンバルディア同盟：自由都市の連合と帝国との抗争

12世紀から13世紀にかけての北イタリアは、幾多の都市が独自の自治を保ち、活気ある商業と文化を花開かせた時代でした。しかし、その自由は神聖ローマ帝国の皇帝による支配の野望に常に脅かされていました。ロンバルディア同盟は、まさにこうした自由都市が皇帝の権力に対抗するために結んだ強力な同盟でした。

ホーエンシュタウフェン朝のイタリア政策と同盟の成立

神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世（赤髭王）は、イタリア全土を支配下に置くことを目指し、幾度もイタリア遠征を行いました。彼は、イタリア諸都市の自治を弱め、自らの権力を強化しようとしたのです。1158年のロンカリア帝国議会では、北イタリアの直接支配を宣言し、各都市の行政官を皇帝の代官に置き換えようとするなど、強硬な姿勢を示しました。

これに対する抵抗として、1164年にはヴェローナ同盟が結成されましたが、ロンバルディア同盟は、ヴェローナ同盟を基盤として、教皇アレクサンデル3世の後援を得て1167年に正式に結成されました。教皇は、皇帝のイタリア支配を阻止することで、自らの権威を高めることを狙っていました。

ポンティーダの誓約で結束を固めた同盟は、ミラノ、クレモナ、ボローニャなど多くの都市から構成され、軍事的な協力だけでなく、経済的な連携も深めていきました。同盟結成後、ミラノは同盟の中でも特に重要な役割を担うようになりました。

レニャーノの戦い、そしてコンスタンツの和議

ロンバルディア同盟は、フリードリヒ1世のイタリア支配に正面から対決しました。1176年、レニャーノの戦いで同盟軍は皇帝軍を大敗させ、皇帝のイタリア支配に大きな打撃を与えました。この勝利によって、同盟は北イタリアにおける勢力を大きく拡大させました。

1177年にはヴェネツィア条約が締結され、6年間の停戦が成立しました。その後、1183年のコンスタンツの和議では、イタリア諸都市は皇帝への忠誠を誓う一方で、自治権を認めさせることに成功しました。しかし、この和議は、同盟内部の都市間の対立を完全に解消するものではなく、特にミラノとクレモナの間の緊張関係は依然として残りました。

フリードリヒ2世と第二次ロンバルディア同盟

フリードリヒ1世の死後、彼の孫であるフリードリヒ2世が皇帝となりました。フリードリヒ2世もまた、イタリアにおける権力拡大を目指し、ロンバルディア同盟と衝突しました。

1226年、フリードリヒ2世のイタリア遠征に対し、ロンバルディア同盟は再び結集しました（第二次ロンバルディア同盟）。その後、コルテヌオーヴァの戦いで皇帝軍が勝利するなど、激しい攻防が繰り広げられました。しかし、フリードリヒ2世の強硬な姿勢は、かえって同盟の結束を強める結果となり、最終的にフリードリヒ2世はミラノの包囲を解いて撤退せざるを得ませんでした。

1250年にフリードリヒ2世が死去すると、神聖ローマ帝国の影響力はイタリアにおいて徐々に弱まり、ロンバルディア同盟は自然消滅しました。

まとめ

ロンバルディア同盟は、イタリアの都市国家が、帝国の支配に対して結束して対抗した歴史的な出来事です。レニャーノの戦いの勝利やコンスタンツの和議締結は、イタリア都市の自治を守る上で重要な出来事であり、イタリア中世史における重要な転換期となりました。この同盟は、都市の自治と自由を守るための強い意志と、教皇との連携という戦略的判断によって、強大な皇帝の権力に対抗し、北イタリアの都市の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。また、同盟の興亡は、イタリアにおける帝国と教皇、そして都市国家の勢力関係の複雑な推移を反映しており、その歴史的研究は、中世ヨーロッパ史理解の鍵となるでしょう。

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