ロータス・88

ロータス 88 (Lotus 88)

ロータス 88は、1981年のF1世界選手権に向けてチーム・ロータスによって設計されたフォーミュラ1カーです。このマシンの特筆すべき点は、ユニークなツインシャーシ構造と進化したダウンフォース技術にあります。しかし、プラクティスには参加したものの、レギュレーション違反のため予選および決勝には出場することができませんでした。

背景と課題

1981年当時、F1界ではグラウンド・エフェクトを最大限に生かすことがデザインの中心課題となっていました。チーム・ロータスは1977年に発表したロータス78でグラウンド・エフェクトの概念を初めて実現し、79ではその成果を確認しました。しかし、80年以降の技術的進展やポーポイジング（走行中の車高変動による操縦性の悪化）の問題に直面し、成績が思わしくありませんでした。この現象は、ダウンフォースの変動が車高変化に伴って激しくなり、操縦性を著しく損なうことを意味します。

この状況を打開すべく、88は新たなデザインアプローチを採用しました。具体的には、上下に動くプライマリーシャーシ（サイドポンツーンを含む）とセカンダリーシャーシ（ドライバーが座る部分）を分離することにより、サスペンションの特性を犠牲にせずにダウンフォースを生み出すことを目指しました。

特徴的な構造

ロータス88の構造は、グラウンド・エフェクトを獲得するためにプライマリーシャーシが沈み込み、セカンダリーシャーシに荷重を掛けるという独特のものです。この設計により、サスペンションの設定を従来通りに保つことができ、ドライバーにとっての快適性と安全性が確保されました。また、88からはモノコックの材質がアルミニウムから炭素繊維強化プラスチック (CFRP) に変更され、軽量化と剛性の向上が図られました。これは、F1界では初めてのカーボンモノコックの採用例の一つです。

レギュレーションの壁

しかし、88の開発においては、FISAによる新しいレギュレーションが障壁となりました。このルールでは、空力関連のボディワークがばね上に固定される必要があるとされ、これがツインシャーシ方式のマシンを事実上禁止する内容でした。1981年の開幕戦アメリカ西GPでは、88はテストを通過したものの、他チームからの抗議により実戦に出場できず、急遽別の車両でレースに臨む事態となりました。

その後も88は幾度かのレースに持ち込まれましたが、決勝での走行は叶いませんでした。チームは抗議の意を込めて一つのレースを欠場し、第8戦には改良型88Bを持ち込みましたが、同様の運命を辿りました。

現状と遺産

ロータス88は公式なF1レースには出場できなかったものの、現在ではヒストリックF1レースへの参加が行われています。製造された2台のうち、1台は日本国内に保存されていますが、モノコックを他のモデルと共有しているため、シャーシナンバーは異なる形態になっています。88は、革新性と困難な状況を乗り越える挑戦の象徴として、F1の歴史に名を刻んでいます。

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