ロード (メタリカのアルバム)

メタリカ『ロード』：変革と葛藤の狭間で生まれた問題作

メタリカの『ロード』は、1996年にリリースされたスタジオ・アルバムです。前作『メタリカ』（通称：ブラック・アルバム）の商業的成功を受け、バンドは新たな音楽性の探求に乗り出しました。その結果生まれたのが、ヘヴィメタルというよりも、むしろオルタナティブ・ロック、ブルース、カントリーといった要素を大胆に取り入れた『ロード』でした。

音楽性の変化

『ロード』は、メタリカの音楽性を大きく変えた作品として知られています。1980年代のスラッシュメタルサウンドは影を潜め、よりメロディアスで、グルーヴ感のある楽曲が中心となりました。ジェイムズ・ヘットフィールドの作詞も変化し、内省的で個人的なテーマを扱うようになりました。代表曲「Until It Sleeps」は、彼の母親の癌との闘いと死をテーマにしており、「Mama Said」もまた母親との関係を歌っています。

ラーズ・ウルリッヒのドラムプレイも、これまでの速くて複雑なツーバスから、よりシンプルでミニマルなアプローチに変わりました。リズムギターの刻みリフにおいても、カーク・ハメットがブルージーな音色とプレイで参加するなど、バンド全体のサウンドに変化が見られました。

論争を呼んだアートワークとファッション

『ロード』のアートワークは、アンドレス・セラーノによる「Semen and Blood Ⅲ」という作品で、牛の血液と精液を混ぜたものをアクリルシートで挟んで撮影したものです。このアートワークは、物議を醸し、特に初期からのファンからは批判の声が上がりました。ジェイムズ自身も、このアートワークを気に入っていないと語っています。

また、アルバムのブックレットには、アントン・コービンが撮影したメンバーの写真が掲載されています。これらの写真では、メンバーがサスペンダー付きのランニングシャツやキューバンスーツなど、様々な衣装を身に着けており、これまでのメタリカのイメージとは大きく異なるものでした。

ファンと評論家の反応

『ロード』は、メタリカの音楽性の変化に対するファンの反応が大きく分かれた作品です。クリフ・バートン在籍時のメタリカを支持するファンからは、ヘヴィメタルから離れた本作を批判する声が多く上がりました。一方で、多くの評論家からは好意的な評価を受けています。『ローリング・ストーン』誌は4つ星を与え、『Q』誌もまた好評価を下しました。

しかし、オールミュージックは、『ロード』を冗長で、薄く、注目されないアルバムと評しました。『メロディ・メイカー』誌は、以前のアルバムと比較して落ち着いてしまった本作に疑念を表明しています。

その後のヘヴィメタルシーンへの影響

『ロード』のヒットは、多くのヘヴィメタル・バンドに影響を与え、「脱正統派メタル」の動きを加速させました。ヘヴィメタル・シーン全体が「遅く、暗く、重く」という方向性のモダン・ヘヴィネス化を推進してしまったという指摘もあります。

まとめ

『ロード』は、メタリカの音楽性を大きく変えただけでなく、ヘヴィメタル・シーン全体に影響を与えた作品です。賛否両論を巻き起こしながらも、新たな音楽性を追求したメタリカの姿勢は、評価されるべきでしょう。バンドの歴史においても重要なターニングポイントとなったアルバムです。

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