ローマ王

ローマ王について

ローマ王（Rex Romanorum）は、古代ローマ及び神聖ローマ帝国での君主を意味する称号です。この称号は、主にドイツ王を指すこともあります。

王政ローマの時代

古代ローマ初期の政治体制は王政であり、初代ローマ王ロームルスが紀元前753年に建国しました。この王政は紀元前509年に第7代王タルクィニウス・スペルブスが追放されるまで行われました。王の地位は世襲ではなく市民によって選ばれていましたが、伝説上の存在とされることが多いのが特徴です。タルクィニウスの追放後は、共和政へと移行し、「王を置かない国家ローマ」という理念が浸透していきます。この時期、特に東方の専制君主への反感が育まれました。

古代ローマが地中海全域に広がると、共和政は窮地に立たされ、再び専制君主が必要とされるようになります。オクタウィアヌスは共和政の職務を兼任する「プリンケプス」として君臨し、元老院によって「アウグストゥス」という称号が与えられ、帝政ローマの始まりが宣言されました。395年には東西ローマ帝国が分裂を迎え、古代ローマは再び「王」という称号を持たぬままとなります。

帝政ローマと王の存在

帝政ローマでは正式には王と呼ばれる者はいませんでしたが、最後の西ローマ皇帝が退位した476年以降も、ソワソン管区で支配を維持していたシアグリウスは周囲から「ローマ人の王」として見なされていました。しかし、フランク王国によって486年にその支配が終了し、シアグリウスは捕えられ、翌年に殺害されました。

一方、東ローマ帝国は約1000年間存続し、ヘラクレイオスが「バシレウス」という称号を用いることで皇帝としての地位を確立しました。この称号はギリシア語で「王」を意味し、以降のビザンツ皇帝も「ローマ王」として知られることとなります。

神聖ローマ帝国のローマ王

11世紀以降の神聖ローマ帝国においては、ローマ王は諸侯に選ばれた君主の称号で、ローマ教皇から戴冠されることでローマ皇帝となる前の段階を指します。この称号は東フランク王から生まれたものであり、その権利は主に現在のドイツに限定されていました。

候補者は成人男子・カトリック信者・聖職者ではないことが条件とされ、より実効的には高位の貴族や司教による選挙が行われます。選挙の実施地はフランクフルト・アム・マインで、後に金印勅書によって選挙権は7人の選帝侯の過半数によるものに定められました。

近世における変遷

1508年にはローマ王マクシミリアン1世が教皇から「選ばれしローマ皇帝」という名を与えられ、その後はローマ皇帝と認識されることが多くなります。このことにより、ローマ王の称号は君主号としての役割を失うに至りました。以降の皇帝は後継者をローマ王として選出し、選ばれた王は即座に新しい皇帝と見なされるようになりました。

一般的に、皇帝が死去するとその皇太子は即位する形式が取られましたが、特に戴冠式の地はアーヘンからフランクフルトに移行し、選帝侯による選出のみでローマ王が戴冠するような状況になっていきました。これによって、ローマ王は事実上の皇太子という位置付けになり、皇帝から選出された際にはすぐに皇帝となることができるようになりました。

まとめ

ローマ王の歴史は古代から近世にかけて大きな変遷を遂げました。元々古代ローマの王政から始まり、さまざまな政治体制を経て、現代に至るまでその影響を色濃く残しています。将軍や君主の称号とともに、ローマ王はヨーロッパ史における重要な役割を果たしてきました。

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