ローマ賞

ローマ賞（Prix de Rome）

ローマ賞は、フランスの芸術専攻学生に対して国家が授与した奨学金制度であり、1663年にルイ14世によって創設されました。この制度は、1968年に廃止されるまで続き、その間に多くの芸術家に影響を与えました。

制度の概要

ローマ賞は、初めは建築、絵画、彫刻、版画の部門で賞が設けられ、王立絵画彫刻アカデミー及び後の芸術アカデミーによって優秀者が選出されました。1666年には、第一等および第二等受賞者に対して、ローマの在ローマ・フランス・アカデミーでの留学権と奨学金が付与されました。留学生は、ローマでルネッサンス期の巨匠たちの作品を学ぶことができ、留学期間は校長の許可により延長可能でした。

1803年、ナポレオンの指導の下でアカデミーはヴィラ・メディチに移転し、同年に制度改革が行われて音楽賞が追加されました。19世紀には、ローマ賞は多くの若手芸術家達の登竜門としての地位を確立しましたが、選出基準の厳しさや保守性が議論されました。

受賞者と権威批判

後に名を馳せる芸術家も多く含まれますが、ローマ賞を受賞したすべての者が成功したわけではありません。ドラクロワやマネなどもローマ賞には挑戦したものの、正式には認められませんでした。一方で、批判的な視点から見れば、旧世代の審査員の保守的な姿勢や私情の持ち込みが問題視されることが多かったのも事実です。

制度の廃止と復活

1968年の五月革命を経て、文化大臣のアンドレ・マルローによりローマ賞は廃止されました。しかし、1971年からは「奨学金給付生」の制度が新たに設けられる形で事実上復活し、現在でも多くの若手芸術家にチャンスを提供しています。今では、給付生はメディチ荘での18ヶ月から2年間の滞在が認められ、主にフランス文化省の管理下で運営されています。

国際的な影響

ローマ賞に触発された同様の制度は、ベルギー、カナダ、オランダ、スペイン、アメリカ合衆国などでも設立されたことがあります。国内外の芸術分野に広く影響を与え続けていることが、ローマ賞の重要性を物語っています。

音楽賞への発展

音楽賞は1803年に追加され、毎年行われたこの賞は、第一次世界大戦と第二次世界大戦の影響を受けつつも、30歳以下の若手作曲家による競争として位置付けられました。審査プロセスは予選と本選に分かれ、最も才能ある受賞者には2年間のローマ・メディチ荘滞在が保障され、全作品が評価されました。しかし、審査システムに疑問を持つ声もあり、特に評価基準に対する疑問が多くなりました。

建築賞

ローマ賞の建築部門も1700年代から続く伝統があり、毎年1名が選ばれる仕組みが整っていました。この制度は他国にも影響を与え、各国で類似の賞が設立されるきっかけとなりました。ローマに派遣された建築家たちは、国の後援を受けて生涯にわたるキャリアを築くための貴重な経験となりました。

ローマ賞は、数世代にわたる芸術家たちに影響を与え続けており、現在でも文化的な遺産としての位置づけを保っています。

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