ロームルスとレムス

ローマ建国神話の核心をなすロムルスとレムス。この双子は、軍神マルスとアルバ・ロンガの王女レア・シルウィアの子として誕生しました。しかし、王位を簒奪した叔父アムリウスは、王位継承の脅威となる双子をテヴェレ川に遺棄します。

運命のいたずら、もしくは神意か、双子は狼に育てられました。やがて羊飼いの夫婦に保護され、逞しく成長した兄弟は、後に祖父である王ヌミトルのもとへ。そこで、自分の身分を知ることになります。

叔父アムリウスを倒し、祖父を王位に復帰させたロムルスとレムスは、自分たちが捨てられた地へ都市建設を決意します。都市建設の権利は、鳥占いで決定されることに。結果は、ロムルスが勝利しました。

紀元前753年4月21日、羊の守護神パレスを祀るパリリア祭の日、ロムルスは新しい町の建設を開始します。しかし、弟のレムスが兄を嘲笑したことから、兄弟間で争いが勃発。ロムルスはレムスを殺害してしまいます。

弟を弔ったロムルスは、ローマ（Roma quadrata）の建設を推し進めます。多くの民を呼び寄せ、40年間ローマを統治した後、彼は雲の中へと消えていったと伝えられています。

このローマ建国神話は、紀元前3世紀には既に存在していました。紀元前296年には、オオカミに育てられる双子の像が奉納され、紀元前269年には、ローマ貨幣にオオカミと双子の姿が刻まれています。これらの史実は、この神話がローマ建国初期から、人々の心に深く根付いていたことを示しています。

ロムルス、ローマ建国の王、伝説の英雄。彼の生涯は、捨て子からローマ建国の王へと上り詰めた、奇跡ともいえる物語です。レムス、ロムルスの弟。兄との確執、そして悲劇的な最期。彼の存在は、ローマ建国の物語に、深い悲しみとドラマを与えています。

ローマ建国神話は、単なる物語ではありません。ローマ人のアイデンティティ、そして国家の起源を象徴する重要な神話です。狼に育てられた双子の物語は、ローマという国家のたくましい生命力、そしてその栄光の礎となった、ロムルスとレムスの兄弟の物語なのです。この神話は、後世の芸術作品、文学作品にも繰り返し取り上げられ、その影響は現代まで及んでいます。ピーテル・パウル・ルーベンスの描いた『ロムルスとレムス』は、その代表的な例でしょう。

ローマ建国神話は、単純な物語を超え、ローマという国家の根源的なアイデンティティを象徴しています。狼に育てられた双子の物語は、困難を乗り越えて発展してきたローマの精神そのものを表現していると言えるでしょう。ロムルスとレムスの物語は、まさにローマ建国初期の、歴史と伝説が織りなす壮大なドラマであり、その魅力は現代においても色褪せることがありません。

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