ローランド・TB-303

ローランド TB-303：アシッドハウスを創り出した伝説のシンセサイザー

TB-303は、ローランドが1982年に発売したベースシンセサイザーです。コンパクトなボディにミュージックシーケンサーを内蔵し、独特の音色と直感的な操作性で、瞬く間に音楽シーンに革命をもたらしました。

概要

発売当初は、リアルなベース音の再現が難しいという評価から、商業的には成功したとは言えませんでした。しかし、1980年代後半にシカゴで誕生したアシッドハウスのクリエイターたちが、TB-303の可能性にいち早く気づき、その独特な音色を最大限に活かした楽曲を制作しました。特に、DJ Pierreがフィルターを全開にした際に偶然生まれた奇妙なサウンドは、アシッドハウスの代名詞となり、TB-303は一躍脚光を浴びる存在となりました。

アシッドハウスとの出会い

DJ PierreがPhuture名義でリリースした「Acid Trax」は、TB-303のサウンドを前面に押し出した革新的な楽曲であり、ダンスミュージックシーンに大きな衝撃を与えました。この曲をきっかけに、TB-303はアシッドハウスの定番機材となり、多くのアーティストがそのサウンドを取り入れました。

中古市場での高騰とクローンモデルの登場

TB-303の人気が高まるにつれて、中古市場での価格は異常な高騰を見せました。入手困難な状況が続く中、Novation Bass StationやDoepfer MS-404など、TB-303の音色を再現しようとするクローンモデルが多数登場しました。また、ローランド自身もMC-303やMC-09といった製品を発売しましたが、TB-303の完全な再現には至りませんでした。

現代に蘇るTB-303

2014年、ローランドはAIRAシリーズの一つとして、TB-3を発売しました。これはTB-303をデジタル技術で復刻したものであり、スライド機能や独自のベース音色を搭載していましたが、タッチパネルによる操作性は賛否両論を呼びました。その後、BoutiqueシリーズとしてTB-03が発売され、外見と操作性はTB-303をほぼ踏襲しましたが、音源はデジタルであるため、こちらも評価が分かれています。

TB-303の独自性

TB-303の音色を特徴づけるのは、梯子型4次ローパスフィルタ（LPF）です。このフィルタは、レゾナンスをかけることで独特のうねりを生み出し、アシッドサウンドの重要な要素となっています。また、シーケンサーは、情報を表示する画面やインジケーターなどが一切無く、各ボタンはモードごとに複数の役割を担う為、打ち込み中は進行情報の多くを脳内で補完して実行しなければならず、意図したパターンを正確に鳴らす為にはある程度の訓練が必要でした。しかし、その難解さゆえに、予測不能なフレーズが生まれることもあり、偶発性の高さが評価されています。

TB-303のレガシー

TB-303は、アシッドハウスの誕生に貢献しただけでなく、テクノ、ハウス、エレクトロなど、様々なジャンルの音楽に影響を与えてきました。その独特なサウンドは、現在も多くのアーティストに愛され、ダンスミュージックの歴史に燦然と輝いています。

303の日

3月3日は「HAPPY 303 DAY!」として、303系の音色を使った演奏をSNSに投稿するイベントが開催されています。

TB-303は、単なるシンセサイザーではなく、音楽の歴史を変えた革新的な楽器として、これからも語り継がれていくでしょう。

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