ローラ-アストンマーティン・B09/60

ローラ・アストンマーティン・B09/60：ル・マンを駆けた名車

ローラ・アストンマーティン・B09/60は、世界耐久選手権の最高峰、ル・マン24時間レース制覇を目指して開発された、究極のレーシングマシンです。アストンマーティン・レーシングが、英国の老舗レーシングカーコンストラクターであるローラ社、そしてプロドライブ社の協力を得て生み出したこのマシンは、19年ぶりのアストンマーティン名義のプロトタイプレーシングカーということもあり、大きな注目を集めました。

その特徴的なデザインは、往年の名車フォードGT40を彷彿とさせるガルフカラーが目を惹きます。しかし、その心臓部には、アストンマーティンDBR9 GT1と同じ6.0リッターV12エンジンを搭載。生産車ベースのエンジンながら、大口径エアリストリクターの採用により、50馬力の出力向上に成功しています。このV12エンジンは、プロトタイプ専用エンジンに比べて重量、高さ、全長が大きいため、設計には細心の注意が払われました。

トランスミッションには、ローラ製標準ギアボックスの代わりに、パドルシフト操作式エクストラック製6速コンパクトギアボックスを採用。軽量化と操作性の向上を図っています。さらに、B09/60のユニークな特徴として、ブレーキ冷却システムに2つのファンを採用。ボディにブレーキダクトを設ける必要がないため、空力性能の向上に貢献しました。

華々しいレース戦績

2009年のデビューイヤー、ル・マン24時間レースでは、ディーゼルエンジン勢が台頭する中、ガソリンエンジンのB09/60は、ヤン・チャロウズ組の007号車が4位入賞という好成績を収めました。続くル・マンシリーズでは、AMRイースタンヨーロッパがLMP1クラスでドライバーズ、チームズタイトルのダブルタイトルを獲得。アジアン・ルマン・シリーズでも優勝を飾るなど、そのポテンシャルの高さを証明しました。

2010年もル・マン24時間レースに参戦し、6位に入賞。セブリング12時間レースでは3位を獲得しました。ル・マンシリーズでも総合2位を獲得するなど、高い安定性と戦闘力を示しました。2011年にはアメリカン・ルマン・シリーズに参戦し、総合2位という好成績を残しました。この年、ル・マン24時間レースには後継機AMR-Oneが参戦しましたが、2台ともリタイア。しかし、プライベーターチームであるクロノス・レーシングがB09/60で参戦し、総合7位という結果を残しています。

技術的革新とレーシングスピリット

ローラ・アストンマーティン・B09/60は、単なるレーシングマシンではありませんでした。既存技術の粋を集め、数々の工夫を凝らした、高度な技術の結晶と言えるでしょう。生産車用エンジンをベースにしながらも、空力性能や冷却性能を徹底的に追求し、トップカテゴリーで戦えるだけの戦闘力を備えていました。

その成功は、ローラ、アストンマーティン、プロドライブという、それぞれの分野で高い技術力を持つ3社の協業によって実現しました。このマシンの開発と活躍は、世界中のモータースポーツファンに深い感動と記憶を残し、今も語り継がれる伝説となっています。B09/60は、技術革新とレーシングスピリットが融合した、真のレーシングマスターピースとして、その歴史に名を刻んでいます。

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