ロール (ヴォー州)

スイスの小さな町、ロール：レマン湖畔の映画の町

スイスのヴォー州、ロール県に位置するロールは、レマン湖の北岸に広がる小さなコミューンです。ジュネーヴからも比較的近く、フランス語圏であるため、フランス文化圏とのつながりが強い地域と言えるでしょう。

その面積はわずか2.72平方キロメートルと非常に小さいですが、2006年の時点で人口4,901人を数え、人口密度は1,802人/平方キロメートルと、日本の大都市に匹敵するほど高い密度を誇っています。住民は「ロロワ」と呼ばれています。

標高378メートル、北緯46度27分、東経06度20分に位置するこの町は、豊かな自然と静寂の中にありながら、同時に活気ある文化シーンも持ち合わせています。特に有名なのが、映画産業との深い繋がりです。

1979年、ヌーヴェルヴァーグを代表する映画監督ジャン＝リュック・ゴダールとパートナーのアンヌ＝マリー・ミエヴィルがパリとグルノーブルからロールに移住しました。そして同年、ゴダールの商業映画復帰作である『勝手に逃げろ/人生|勝手に逃げろ_人生』がロールで撮影されました。

この出来事をきっかけに、ロールは映画制作の盛んな町へと変貌を遂げました。ゴダール監督の作品はもちろんのこと、数多くの映画がロールで撮影され、フランスやアメリカなど世界中から映画関係者が集まるようになりました。ゴダール監督とロールで知り合った録音技師、フランソワ・ミュジーもロールに録音スタジオを設立し、映画制作を支えています。

ロールを取り巻く地域では、1960年代後半から映画制作が盛んであり、ローザンヌにあるシネマテーク・スイス（フィルム・アーカイヴ）やジュネーヴのテレビ局テレヴィジオン・スイス・ロマンド（TSR）といった機関の存在も、その活況を後押ししています。

このように、ロールは小さな町ながらも、豊かな自然、高い人口密度、そして活気ある映画産業という、独特の魅力を兼ね備えています。レマン湖の美しい景色と、映画の歴史が刻まれた街並みを一度訪れてみる価値は十分にあると言えるでしょう。

近年では、ル・ロゼ学院という名門寄宿学校のキャンパスもロールにあり、教育面でも注目されている地域です。自然と文化、そして教育が調和した、魅力的な町、ロール。その静かな佇まいの中に、活気に満ちた歴史が息づいています。

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