ロールス・ロイス・トゥウェンティー

ロールス・ロイス トゥウェンティー：小型で扱いやすい高級車の誕生

ロールス・ロイスは、1908年からシルヴァーゴーストという大型高級車のみを生産していました。しかし、第一次世界大戦後の不況や高級車オーナーの運転志向の高まりを受け、より小型で扱いやすい車種の開発が求められるようになりました。その結果、1922年から1929年にかけて製造されたのが「トゥウェンティー」です。

トゥウェンティーは、シルヴァーゴーストの約半分となる排気量3,127ccのエンジンを搭載。当初は、航空機エンジン技術を応用したDOHC直列6気筒エンジンが計画されていましたが、製造上の困難さやコストの問題から、プッシュロッドOHVエンジンに変更されました。最大出力は約50馬力と控えめでしたが、これはフレデリック・ヘンリー・ロイスの「ピークパワー数値は車の良し悪しの条件ではない」という哲学に基づいたもので、以後長年続くロールス・ロイスのポリシーとなりました。最高出力数値は公表されませんでした。

トランスミッションは当初3速MTでしたが、顧客からの批判を受け、1925年には4速MTに変更されました。しかし、オーナーは主に上位2段しか使用しなかったようです。シャシのみの価格は1925年時点で£1,100、オープンツアラーボディー付きで£1,590と、シルヴァーゴーストより低価格ながらも高級車の風格を保っていました。

ホイールベースは129インチ(約3,276.6mm)と、比較的コンパクトな設計でしたが、多くのオーナーが豪華な、重量のあるカスタムボディを装着したため、ロールス・ロイス社は後に重量制限を設けることになりました。重量制限を超えるボディを装着した場合、保証の対象外となりました。

『The Motor』誌のテストによれば、最高速度は62mph(約100km/h)で、後期型では70mph(約112km/h)に達しました。1920年代の3リッター級車としては十分な性能を備えていました。

トゥウェンティーは、ロールス・ロイスにとって新たな顧客層を開拓する成功モデルとなりました。製造中止までに2,885台から2,940台が生産され、そのコンパクトな車体と手頃な価格から、1970年代まで実用で使われた事例も少なくありませんでした。

日本においても、1923年から1924年頃に製造された初期型のトゥウェンティーが、実業家である赤星鉄馬氏によって所有されていた記録があります。この車両は改造されながらも1955年まで使用されていたようです。

トゥウェンティーは、ロールス・ロイスの歴史において重要な転換期を象徴するモデルです。高級車の枠にとらわれず、より幅広い顧客層にアプローチする、ロールス・ロイスの新たな戦略がここに反映されています。その小型で扱いやすい車体は、多くのオーナーに快適なドライビング体験を提供し、ロールス・ロイスのブランドイメージをさらに高めました。そして、トゥウェンティーは、ロールス・ロイスが時代の変化に対応し、発展を遂げていく力強さを示す、貴重な証として今日まで語り継がれています。

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