ロールス・ロイス・15HP

ロールス・ロイス15HP：幻の3気筒モデル

ロールス・ロイス社を語る上で欠かせないモデルの一つに、15HPがあります。1904年に試作、1905年に製造されたこの車は、後のロールス・ロイスの隆盛を予感させる重要な一歩を示すモデルだったと言えるでしょう。しかし、その生産台数はわずか6台。その短い歴史と、希少性ゆえに、多くの謎に包まれた存在でもあります。

15HPの開発は、チャールズ・ロールズとフレデリック・ヘンリー・ロイスの契約に端を発します。成功を収めていたロイスの10HPを高く評価したロールズは、ロイス社との連携を強化。以後、ロイス社が製造する車両は「ロールス・ロイス」ブランドとして、ロールズが独占販売することになったのです。

この契約を背景に、ロールズの要請により、多気筒エンジンの開発が進められました。既に高い評価を得ていた2気筒の10HPをベースに、ほぼそのまま3気筒化したモデルとして誕生したのが、15HPです。

エンジンは、10HPと共通部品を多く採用することでコスト効率を高めました。内径をわずかに拡大した4インチ(約101.6mm)×行程5インチ(約127mm)の3,089cc、3気筒エンジンは、スムーズな走りと扱いやすさを両立。10HPをベースとしながらも、パワーアップと改良を図った設計となっています。試作車は1904年中に完成し、翌年には製造が開始されました。

トランスミッションは3速MT、ホイールベースは103インチ(約2616.2mm)と、当時の高級車らしい仕様です。しかし、その後の20HPの登場により、15HPは個性と特徴の乏しいモデルという評価を受けることになります。10HPと20HPの中間に位置する、いわば「中途半端な存在」となってしまったのです。このことが、わずか6台の生産で終わった理由の一つと考えられます。

15HPは、ロールス・ロイスの歴史において、量産車としては成功したとは言えないモデルです。しかし、ロールス・ロイスというブランドを確立していく上での重要なステップであり、技術開発における試行錯誤の跡を垣間見ることができる貴重な存在と言えます。その希少性と歴史的意義から、現在ではコレクターズアイテムとして高い価値を持つでしょう。

参考文献

小林彰太郎『世界の自動車-21 ロールス・ロイス - 戦前』二玄社
『ワールド・カー・ガイド27ロールス・ロイス&ベントレー』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-166-8

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