ロールス・ロイス・20HP

ロールス・ロイス20HP：黎明期の傑作

ロールス・ロイス20HPは、1904年にF・H・ロイス（後のロールス・ロイス）社が試作し、1905年から1907年にかけて製造された乗用車です。この車両は、同社の歴史において重要な位置を占めるモデルであり、後のロールス・ロイスブランドの成功の礎を築いたと言えるでしょう。

ロールス・ロイスブランドの誕生と20HPの開発

20HPの開発には、フレデリック・ヘンリー・ロイスとチャールズ・ロールズの協力関係が深く関わっています。チャールズ・ロールズは、ロイスが開発した10HPを高く評価し、彼との契約を結びました。これにより、以降の車両は「ロールス・ロイス」ブランドとして生産、販売されることとなり、ロールス・ロイス社の歴史が幕を開けたのです。

チャールズ・ロールズは、より高性能な多気筒エンジンの開発をロイスに要請。その結果、既存の2気筒10HPをベースに、直列4気筒エンジンを搭載した20HPが企画されました。20HPのエンジンは、10HPと多くの共通部品を使用しており、効率的な開発・生産を可能にしていました。1904年には試作車が完成しています。

エンジンとシャシ：10HPからの進化

初期型の20HPは、10HP初期型と同様、内径約82.6mm×行程約127mmの2,721ccエンジンを搭載。1906年には、内径をわずかに拡大し、内径約101.6mm×行程約127mm、4,116ccへと排気量が向上しました。トランスミッションは3速MT、ホイールベースはショート版で約2,692.4mm、ロング版で約2,895.6mmと、車体サイズにバリエーションがありました。

レースでの活躍：信頼性の証

20HPは、レースにおいてもその性能を遺憾なく発揮しました。特に1905年のマン島TTレースには、2台の20HPが参戦。チャールズ・ロールズが運転する1台はトランスミッション故障でリタイヤしたものの、もう1台は2位に入賞しました。翌1906年には、チャールズ・ロールズ運転の20HPが、2位を27分も引き離して優勝。この勝利は、ロールス・ロイス車の高い信頼性と性能を世界に知らしめることとなりました。さらに同車は同年、モンテカルロ - ロンドン間を平均時速約44kmで走破し、それまでの最高記録を更新。ヨーロッパ全土にその高い信頼性が知れ渡ることになりました。このレース仕様車は、ホイールベースが約2,692mmと、やや短くなっていました。

生産と販売：40台の限定モデル

総生産台数は約40台と、希少性の高いモデルです。10HPをベースとしながらも、多気筒化による出力向上、そしてレースでの輝かしい実績により、ロールス・ロイスのブランドイメージを確立する上で、20HPは非常に重要な役割を果たしたと言えるでしょう。その優れた性能と信頼性は、後のロールス・ロイス車の成功の礎となりました。

参考文献

小林彰太郎『世界の自動車-21 ロールス・ロイス - 戦前』二玄社
『ワールド・カー・ガイド27ロールス・ロイス&ベントレー』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-166-8

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