ロール・エム・ピート

ロール・エム・ピート (Roll 'Em Pete)

「ロール・エム・ピート」は、1938年12月にビッグ・ジョー・ターナーとピアニストのピート・ジョンソンが最初に録音したリズム・アンド・ブルースの楽曲です。この曲は、後のロックンロールの誕生において重要な役割を果たしたと広く見なされています。

録音の背景

ジョンソンはミズーリ州カンザスシティで活動していたブギウギピアニストで、1930年代の初めからターナーと共演していました。ターナーはしばしばバーテンダーとして働きながら、ブルースの楽曲を力強く叫ぶように歌う「ブルースシャウター」として知られていました。1938年、ニューヨークのカーネギー・ホールで行われた「フロム・スピリチュアル・トゥ・スイング」というコンサートにプロモーターのジョン・ハモンドに招かれ、2人はその間にレコーディングを行うことに決めました。

彼らは、1938年12月30日に ヴォカリオン・レコードで「ロール・エム・ピート」の録音を行いました。この曲は、カンザスシティのクラブシーンにおいてジョンソンの代表的なスタイルを反映したアップテンポのブギウギであり、ターナーはしばしば即興の歌詞を取り入れ、おおひと演奏の中で1時間以上続けることもありました。

音楽スタイルと影響

この録音は、ジョンソンの華やかなピアノ演奏とターナーの力強いボーカルを前面に押し出しており、ターナーは有名なフレーズを繰り返し、曲を盛り上げる独特なスタイルを確立しました。音楽評論家のポール・オリヴァーはこの録音を、「ジョンソンのスリリングなピアノとターナーの力強いボーカルの組み合わせ」として評価しています。また、ラリー・バーンバウムは、「ロール・エム・ピート」は初期のロックンロールのレコードとみなす価値があると語っており、この楽曲のリズムとメロディーには今後のロックシーンへの予兆が見て取れます。

ターナーの歌詞の一部は、後にロックを形作る要素の一部となり、曲調やリズムは後代のアーティストたちに多大な影響を与えました。ターナーとジョンソンの演奏は、ロックンロールが広く受け入れられる前の、洗練されたスタイルではあるものの、まだ斬新な響きを持っていました。

後の影響とカバー

後にビッグ・ジョー・ターナーは、多くの著名なミュージシャンたちとともにこの曲のさまざまなバージョンを録音し続けました。この影響力は、「ロール・エム・ピート」が数多くのアーティストにカバーされる要因ともなりました。中でもアルバート・アモンズや、カウント・ベイシーとジョー・ウィリアムズの共演が有名であり、1956年のアルバム『Count Basie Swings, Joe Williams Sings』に収録されたことでも知られています。

他にも、ルー・ロウルズやライオネル・ハンプトン、T-ボーン・ウォーカーといった多様なアーティストがこの曲に自身の解釈を加え、音楽シーンに新たな光を添えました。さらに、ザ・ブラスターズやロブ・アフルベークといった現代のミュージシャンもこの楽曲に着目し、自らのアルバムに収めています。

「ロール・エム・ピート」は、単なる一曲以上の存在であり、アメリカ音楽の歴史に重要な一ページを記した作品として、これからも多くの人々に親しまれ続けるでしょう。

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