ローンチコントロール

ローンチコントロール：停止状態からの完璧な発進を支援する技術

ローンチコントロール (Launch Control, LC) は、静止状態から車両を迅速かつ円滑に発進させるための高度な自動制御技術です。このシステムは、エンジンの回転数を精密に調整することでタイヤの空転（ホイールスピン）を防止し、最大限のトラクションを確保します。トラクションコントロールシステム (TCS) の一種ですが、スタート時のみに特化しており、走行中はTCSに切り替わります。

ローンチコントロールの仕組み

停止状態からの急加速では、アクセル操作とクラッチの繋ぎ具合が非常に重要になります。アクセルを踏み込みすぎるとタイヤが空転し、逆に控えめすぎるとエンストする危険性があります。熟練したドライバーであっても、最適な操作を毎回正確に行うのは容易ではありません。

ローンチコントロールは、ECU（電子制御ユニット）がアクセルとクラッチを自動制御することで、ドライバーのスキルに関係なく最適な発進を可能にします。これにより、クラッチやギアボックスへの負担も軽減され、スムーズで安全な発進を実現します。

モータースポーツにおけるローンチコントロール

モータースポーツの世界では、スタート直後の順位がレース結果を大きく左右します。そのため、少しでも有利なスタートを切るために、ローンチコントロール技術の開発競争が激化しました。

しかし、スタート操作はドライバーの技量を問われる場面でもあり、完全に機械に任せることに対する懸念や、高度な電子制御技術による開発コストの高騰といった批判もあります。多くのカテゴリーではローンチコントロールの使用が禁止されていますが、ECUの精密な制御により、同様の効果を得ているケースもあります。

F1におけるローンチコントロールの歴史

F1では、1994年以降TCSなどの電子制御装置が禁止されていましたが、2001年に再び合法化されました。その後、ローンチコントロール開発競争は激化しましたが、2004年には使用が禁止されました。禁止後も、TCSを応用したマニュアルスタートシステムが開発されましたが、2008年から導入された共通ECUにはTCS機能が搭載されていません。

F1のローンチコントロールシステムでは、スタート直前にエンジン回転数を一定値に維持し、スタート信号と同時にクラッチを繋ぎます。このシステムは2秒未満しか動作せず、作動中はアクセル操作を受け付けません。システムのパラメーター設定は、路面状況やグリッド位置などのデータに基づいてエンジニアによって調整されます。

WRCにおけるローンチコントロール

世界ラリー選手権（WRC）でも、2005年まではローンチコントロールの使用が認められていました。特にグラベルや凍結路面のような低μ路面では、その効果を発揮しました。起動スイッチが備えられており、ドライバーが必要に応じて使用することができました。

ロードカー（市販車）におけるローンチコントロール

近年では、フェラーリ、ポルシェ、BMW、レクサスLFA、日産GT-Rなど、高性能スポーツカーにローンチコントロールが搭載されるようになりました。操作方法は車種によって異なりますが、一般的にはブレーキを踏みながらアクセルを深く踏み込み、ブレーキを離すと急発進する仕組みです。

公道での使用は危険運転を招く可能性があるため推奨されていませんが、サーキット走行などでは、非日常的な加速感を体験できる魅力的な機能となっています。

まとめ

ローンチコントロールは、ドライバーのスキルに関係なく、最適な発進を可能にする高度な技術です。モータースポーツから市販車まで、その応用範囲は広く、今後も技術革新が期待されます。しかし、安全面やコスト面、スポーツマンシップといった観点からも、その使用に関する議論は継続していく必要があるでしょう。

もう一度検索