ワイス (企業)
ワイス（Wyeth）は、かつてアメリカ合衆国と日本において重要な存在感を放っていた大手医薬品メーカーです。
そのルーツは古く、1860年にワイス兄弟（ジョンとフランク）がフィラデルフィアで薬局を開業したことに遡ります。アメリカ合衆国のニュージャージー州に本社を構えていましたが、特に大きな転換期を迎えたのは2002年3月11日です。この日、それまでの社名であるアメリカン・ホーム・プロダクツ（American Home Products, AHP）から、創業者の名を冠した「ワイス」へと社名を改めました。しかし、その独立した歴史も長くは続かず、2009年1月には大手製薬企業のファイザーが約680億ドルという巨額での買収合意を発表。同年10月には買収手続きが完了し、ワイスという企業体はファイザーの一部となりました。
日本におけるワイスの事業は、医療用医薬品部門を担う「ワイス株式会社」が中心でした。東京都品川区大崎に本社を構えていましたが、その設立経緯はやや複雑です。その前身は、1998年12月1日に誕生した「日本ワイスレダリー株式会社」です。これは、AHPによるアメリカン・サイアナミッド買収の結果、1953年に武田薬品工業とアメリカン・サイアナミッド・カンパニーの共同出資で設立された「日本レダリー株式会社」と、1957年に設立された「日本ワイス株式会社」が合併して生まれた企業でした。当初の出資比率は、米ワイス社が8割、武田薬品工業が2割でしたが、2007年4月には米ワイス社の100%完全子会社となり、これに合わせて社名も「ワイス株式会社」へと変更しました。
ワイス株式会社は、主に日本国内向けの医療用医薬品の製造販売を行っていましたが、旧日本ワイスはかつて育児用粉ミルクの分野でも知られていました。「SMA」などの製品を展開していましたが、1999年にはこの粉乳部門を投資会社であるアドバンテッジ パートナーズへ譲渡。その後、この部門はアイクレオへと商号を変え、2001年以降は江崎グリコの子会社となりました。また、一般用医薬品（いわゆる大衆薬）の部門として存在した「ホワイトホールジャパンコーポレーション株式会社」（旧アメリカンドラッグコーポレーション）も、2001年に小林製薬に事業が引き継がれています。さらに、2002年には自社のヘルスケア製品（大衆薬）事業の一部を武田薬品工業株式会社へ移管するなど、事業の再編・整理が度々行われていました。
そして、親会社である米ワイスがファイザーに買収されたことを受け、日本法人であるワイス株式会社もまた、2010年6月1日にファイザー株式会社と合併し、新たにファイザー株式会社としてスタートしました。これにより、「ワイス株式会社」の名称は消滅しました。
日本におけるワイス及びその前身企業の歴史は、以下のような節目を経ていました。
1953年8月17日：武田薬品工業とアメリカンサイアナミッド社との共同出資により日本レダリー株式会社が設立され、「ロバックS軟膏」の販売を開始。
1957年：日本ワイス株式会社が設立。
1961年：日本ワイスが育児用ミルク「SMA」の製造を開始。
1963年：日本レダリーが設立10年を迎え、東京工場及び本社機能を埼玉県志木市へ移転。
1991年10月：日本ワイスがエーザイとの共同出資により「ワイス・エーザイ」を設立。
1996年3月：エーザイとの提携関係を解消し、ワイス・エーザイは日本ワイスに統合される。
1998年12月1日：日本レダリーと日本ワイスが合併し、日本ワイスレダリー株式会社が誕生。
1999年：粉乳部門をアドバンテッジ パートナーズへ譲渡。
2001年：ホワイトホールジャパンコーポレーションを小林製薬へ譲渡。
2002年：大衆薬事業の一部を武田薬品工業へ移管。
2003年12月1日：社名をワイス株式会社に変更。
2010年6月1日：ファイザー株式会社と合併。
ワイスは、医療用医薬品、一般用医薬品、そしてかつての粉ミルクなど、多岐にわたる製品ポートフォリオを有していました。医療用医薬品では「バリダーゼ」や「ミノマイシン」、一般用医薬品では「ロバック」シリーズなどが知られています。
日本国内には、本社（東京都品川区）のほか、志木事業所（埼玉県志木市）を拠点とし、日本全国に広がる広範な支店や営業所ネットワークを構築していました（2010年5月終了時点）。これらの拠点が、医薬品の安定供給と情報提供を担っていました。
ワイスは現在は存在しない企業ですが、その歴史の中で開発・販売された製品や、培われた技術、そして事業所ネットワークの一部は、合併先のファイザーをはじめ、事業譲渡を受けた他の企業に引き継がれ、現代の医療や人々の健康に貢献し続けています。
企業の成り立ちと変遷
そのルーツは古く、1860年にワイス兄弟（ジョンとフランク）がフィラデルフィアで薬局を開業したことに遡ります。アメリカ合衆国のニュージャージー州に本社を構えていましたが、特に大きな転換期を迎えたのは2002年3月11日です。この日、それまでの社名であるアメリカン・ホーム・プロダクツ（American Home Products, AHP）から、創業者の名を冠した「ワイス」へと社名を改めました。しかし、その独立した歴史も長くは続かず、2009年1月には大手製薬企業のファイザーが約680億ドルという巨額での買収合意を発表。同年10月には買収手続きが完了し、ワイスという企業体はファイザーの一部となりました。
日本法人「ワイス株式会社」の複雑な歴史
日本におけるワイスの事業は、医療用医薬品部門を担う「ワイス株式会社」が中心でした。東京都品川区大崎に本社を構えていましたが、その設立経緯はやや複雑です。その前身は、1998年12月1日に誕生した「日本ワイスレダリー株式会社」です。これは、AHPによるアメリカン・サイアナミッド買収の結果、1953年に武田薬品工業とアメリカン・サイアナミッド・カンパニーの共同出資で設立された「日本レダリー株式会社」と、1957年に設立された「日本ワイス株式会社」が合併して生まれた企業でした。当初の出資比率は、米ワイス社が8割、武田薬品工業が2割でしたが、2007年4月には米ワイス社の100%完全子会社となり、これに合わせて社名も「ワイス株式会社」へと変更しました。
ワイス株式会社は、主に日本国内向けの医療用医薬品の製造販売を行っていましたが、旧日本ワイスはかつて育児用粉ミルクの分野でも知られていました。「SMA」などの製品を展開していましたが、1999年にはこの粉乳部門を投資会社であるアドバンテッジ パートナーズへ譲渡。その後、この部門はアイクレオへと商号を変え、2001年以降は江崎グリコの子会社となりました。また、一般用医薬品（いわゆる大衆薬）の部門として存在した「ホワイトホールジャパンコーポレーション株式会社」（旧アメリカンドラッグコーポレーション）も、2001年に小林製薬に事業が引き継がれています。さらに、2002年には自社のヘルスケア製品（大衆薬）事業の一部を武田薬品工業株式会社へ移管するなど、事業の再編・整理が度々行われていました。
そして、親会社である米ワイスがファイザーに買収されたことを受け、日本法人であるワイス株式会社もまた、2010年6月1日にファイザー株式会社と合併し、新たにファイザー株式会社としてスタートしました。これにより、「ワイス株式会社」の名称は消滅しました。
沿革に見る軌跡
日本におけるワイス及びその前身企業の歴史は、以下のような節目を経ていました。
1953年8月17日：武田薬品工業とアメリカンサイアナミッド社との共同出資により日本レダリー株式会社が設立され、「ロバックS軟膏」の販売を開始。
1957年：日本ワイス株式会社が設立。
1961年：日本ワイスが育児用ミルク「SMA」の製造を開始。
1963年：日本レダリーが設立10年を迎え、東京工場及び本社機能を埼玉県志木市へ移転。
1991年10月：日本ワイスがエーザイとの共同出資により「ワイス・エーザイ」を設立。
1996年3月：エーザイとの提携関係を解消し、ワイス・エーザイは日本ワイスに統合される。
1998年12月1日：日本レダリーと日本ワイスが合併し、日本ワイスレダリー株式会社が誕生。
1999年：粉乳部門をアドバンテッジ パートナーズへ譲渡。
2001年：ホワイトホールジャパンコーポレーションを小林製薬へ譲渡。
2002年：大衆薬事業の一部を武田薬品工業へ移管。
2003年12月1日：社名をワイス株式会社に変更。
2010年6月1日：ファイザー株式会社と合併。
製品と事業所
ワイスは、医療用医薬品、一般用医薬品、そしてかつての粉ミルクなど、多岐にわたる製品ポートフォリオを有していました。医療用医薬品では「バリダーゼ」や「ミノマイシン」、一般用医薬品では「ロバック」シリーズなどが知られています。
日本国内には、本社（東京都品川区）のほか、志木事業所（埼玉県志木市）を拠点とし、日本全国に広がる広範な支店や営業所ネットワークを構築していました（2010年5月終了時点）。これらの拠点が、医薬品の安定供給と情報提供を担っていました。
ワイスは現在は存在しない企業ですが、その歴史の中で開発・販売された製品や、培われた技術、そして事業所ネットワークの一部は、合併先のファイザーをはじめ、事業譲渡を受けた他の企業に引き継がれ、現代の医療や人々の健康に貢献し続けています。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。