ワイテック硬式野球部

ワイテック硬式野球部

ワイテック硬式野球部は、かつて広島県安芸郡海田町に本拠地を置き活動していた社会人野球の企業チームです。運営母体は、自動車部品の製造や金型設計製作などを手掛けるワイテック株式会社でした。チームは日本野球連盟に加盟し、地域に根ざした活動を展開していました。練習場は広島県東広島市に設けられていました。

チームの沿革

チームの起源は1970年に遡ります。当時、金属製品、特に自動車車体の製造を主に行っていた山本鋼材株式会社が、「山本鋼材硬式野球部」としてチームを設立しました。企業スポーツの一環として、従業員の士気向上や地域貢献を目指した活動が始まりました。

その後、運営母体である山本鋼材の社名変更に伴い、チーム名も改称されることになります。1992年には、新たな社名に合わせて「ヤマコー硬式野球部」と名称が変更されました。そして、2001年のシーズン途中には、さらなる社名変更により、最終的なチーム名である「ワイテック硬式野球部」に改称され、活動を続けました。

企業チームとして、主要な社会人野球大会への出場を目指し、日々の練習に励みました。特に、地域で開催される大会では存在感を示しました。

主な活動実績

ワイテック硬式野球部として、特筆すべき実績としては、JABA徳山(スポニチ)大会での優勝が挙げられます。2006年、チームはこの大会で初めて頂点に立ち、その名を全国の社会人野球界に示しました。これは、チームの歴史における重要な一歩となりました。

残念ながら、都市対抗野球大会や社会人野球日本選手権大会といった全国規模の主要大会への出場は叶いませんでしたが、地方大会での活躍を通じて、社会人野球の振興に貢献しました。

チームの終焉

長年にわたり活動を続けてきたワイテック硬式野球部でしたが、2013年をもってその歴史に幕を下ろしました。廃部の理由について、会社側は「会社活性化のために作られた野球部は一定の役割を終えた」と説明しています。企業チームとしての設立目的や役割が変化したこと、あるいは経営状況の変化などが影響した可能性が考えられます。野球部は惜しまれつつも解散し、選手の多くは社業に専念したり、新たな活動の場を求めたりしました。

チームゆかりの人物

ワイテック硬式野球部およびその前身チームからは、複数のプロ野球選手が誕生しています。

黒木 実：捕手としてプレー。1975年のドラフト外で日本ハムファイターズに入団し、プロの道を歩みました。
井上 卓也：投手。1979年、同じくドラフト外で広島東洋カープに入団しました。
森 厚三：投手。井上と同じく1979年にドラフト外で広島東洋カープに入団しました。
塚本 浩二：投手。ワイテック退社後、四国・九州アイランドリーグの香川オリーブガイナーズで活躍。その後、2008年の育成選手ドラフト2位で東京ヤクルトスワローズに入団しました。
江村 将也：投手。2012年のNPBドラフト会議で東京ヤクルトスワローズから4位指名を受け入団しました。

また、プロ入りはしませんでしたが、退社後に指導者として活躍する人物もいます。

坂原 秀尚：投手として在籍。退社後、高校野球の指導者となり、下関国際高校を率いて甲子園出場を果たすなど、手腕を発揮しています。
* 岡嵜 雄介：外野手。退社後、四国アイランドリーグの徳島インディゴソックスでプレー。その後、立命館高校、武田高校の監督を務めるなど、アマチュア野球の指導者として活動しています。

ワイテック硬式野球部は、その短いながらも確かな歴史の中で、地域社会に貢献し、多くの野球選手を育て、送り出しました。廃部によってチームはなくなりましたが、その歩みは広島県の社会人野球の歴史に刻まれています。

もう一度検索