ワイヤーアクション

ワイヤーアクションの概要

ワイヤーアクションは、映画や舞台で俳優やスタントマンが特別なハーネスで吊られ、ロープを使って空中に飛んだり回転したりする演技を行う技術です。この手法は主に「ワイヤーワーク」とも呼ばれ、大部分の撮影現場では、世界的に「ワイヤー」という用語が使われています。この技法は、技術の進化と共に多様な動きを実現できるようになり、魅力的なアクションシーンを生み出してきました。

歴史的背景

ワイヤーアクションの起源は、1954年のブロードウェイミュージカル『ピーターパン』に遡ります。また、日本の伝統芸能である歌舞伎にも通じる「宙乗り」が元祖とも言われています。日本での映画への初導入は、1965年の円谷英二が監督した『大冒険』が挙げられますが、ワイヤーアクションの様々な形は1950年代にさかのぼることができます。特に、特撮時代の日本映画では既にワイヤーが使用され、数多くのスタントマンが活躍していました。

技術的側面

ワイヤーアクションでは、俳優やスタントマンにハーネスを着用させ、ロープを介してスタッフが人力または圧縮空気を利用して引っ張ります。これにより、アクションシーンでは人間が空中で自由に動くことが可能になります。使用するワイヤーは、昔の金属製から高強度ポリエチレン繊維製のものに変わり、安全性と柔軟性が向上しています。ハーネスは吊るされる位置に応じて背中や脇に取り付けられ、時には人の体重に応じて引っ張る人数が変わることもあります。特に重量のある俳優には多くの人手が必要です。

操作の難しさ

ワイヤーアクションは、間接的な動きが必要なため、引く側と演技をする側のタイミングが重要です。まず、上記で述べたように、引く側が先に動作を始めることが基本であり、演技者がその後動き出すことで自然な動きを実現します。また、滑車を使うことで、使い手が位置を調整しやすく、よりダイナミックなアクションが可能になります。演技者は非常に複雑な動きを要求されるため、高度なトレーニングを受ける必要があります。

映画界への影響

1980年代から2000年代にかけて、ワイヤーアクションは香港の映画界で盛んに使われるようになりました。特に、アクション監督のチン・シウトンが活躍し、照明やカメラアングルを駆使してワイヤーを目立たなくする技術を多用しました。1999年に公開された『マトリックス』は、香港のアクション監督ユエン・ウーピンを招いてこの技術をハリウッドに持ち込み、以降は国際的に注目を集めることになります。

現代の展望

近年では、デジタル技術の発展によってワイヤーアクションの映像表現はさらに洗練されています。VFXを用いることで、ワイヤーが画面に映らないような処理が可能になり、俳優はより自由に演技することが可能となりました。また、ハリウッドではコンピュータ制御の機材が導入され、最新の技術を利用したアクションシーンが描かれるようになりました。これに伴って、専門のチームが手がけることが多く、スタントマンとしての役割はますます重要になっています。

主な作品

ワイヤーアクションが用いられた代表的な作品には、ミュージカル『ピーターパン』をはじめ、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』や『マトリックス』、最近では『ゼロ・グラビティ』などがあり、各作品でその特異性を生かした演出が見られます。これにより、観客は目を見張るような演技やシーンを楽しむことができるのです。

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