ワイルドキャット自走対空砲

ワイルドキャット自走対空砲

ワイルドキャット自走対空砲は、1980年代に西ドイツで開発された優れた自走式の対空砲です。制式化されなかったものの、このシステムは多くの試作とデモンストレーションを経て、国産の技術的特性を具現化しました。

歴史的背景

この自走対空砲の開発には、クラウス＝マッファイ、シーメンス、タレス・ネーデルランド、モーゼル、クーカ、AEGといった複数の軍需企業が関与しました。これらの企業は、発展途上国をターゲットにし、ゲパルトという高価で複雑な対空砲に代わる比較的安価な選択肢としてワイルドキャットを位置づけました。1981年には試作機が一般に公開されましたが、量産に繋がる注文には至らなかったため、実戦投入は実現しませんでした。

車両の特性

ワイルドキャットは、実績のある６×６型装甲車両フクスを基に設計されています。フクスからの主要な部品はそのまま使用され、装甲もフクスと同等の耐久性を持ち続けました。ただし、砲塔には追加の多層装甲が施されていたものの、現代の武器に対する防護性能については十分ではありませんでした。

この自走対空砲の砲塔は小型であり、大口径の重機関砲を搭載することができなかったため、35mmの対空砲を使用するゲパルトに代わり、より小さな口径のMK 30-Fを採用しました。この砲塔は、対空目標用に340発、地上攻撃用に40発の弾薬を装填可能で、最大射程は3,700mでした。

バリエーション

クラウス＝マッファイはこのワイルドキャットに対していくつかの派生型を提案しましたが、全ての型で電子制御の火器管制が共通点としてありました。昼間型と全天候型の2つのカテゴリがあり、多様な運用シナリオに応じて調整できる特長を持っています。

• - 1型: 昼間のみ作戦が可能で、目視による敵味方識別と目標探索を行います。
• - 2型: 昼間に特化し、戦術データリンクを用いた識別とレーザー距離計による追跡機能を持ちます。
• - 3型: 統合的な敵味方識別装置を装備し、視覚及びレーダーで目標探索が可能です。
• - 4型: 全天候型で、赤外線センサーによる補助が加わり、追跡機能が強化されています。

さらに、モワク社が試作した8×8型のシャークをベースとしたバリエーションも存在します。

メンテナンスの容易さ

ワイルドキャットの主な利点は、一般的に普及しているフクス装甲輸送車を基にしているため、部品の入手が容易であり、システムのメンテナンスが格段に簡素化される点にあります。これにより、コストを抑えつつ、高い稼働率を維持することが可能となりました。

結論

1980年代に登場したワイルドキャット自走対空砲は、技術的な挑戦とともに将来の機会を模索した試みのひとつです。最終的には量産には至りませんでしたが、その設計思想や使用技術は後の兵器開発に影響を与えたと考えられています。

参考文献

• - フィリップ・トレウィット著『戦車。第一次世界大戦から現在までの世界で最も重要な戦闘車両』
• - デビッド・ミラー、クリストファーF.フォス著『現代の戦闘兵器』

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