ワカケホンセイインコ

ワカケホンセイインコ

ワカケホンセイインコ（学名：Psittacula krameri manillensis）は、オウム目インコ科に分類される鳥類の一種です。リングネックパラキートとも呼ばれ、インドやスリランカといった南アジアの温暖な地域が原産です。ホンセイインコ、オオホンセイインコなどとともにホンセイインコ属を構成し、この属は南アジア、西アジア、アフリカ中部に広く分布しています。

分布

原産地は北緯20度以南のインドおよびスリランカですが、ペットとして世界各地に持ち込まれた個体が逃げ出すなどして野生化する現象が多数報告されています。特にヨーロッパではイギリス、ドイツ、ベルギー、オランダなどで定着が確認されており、都市部の公園などで見かけることができます。日本国内でも野生化が進んでおり、1969年に東京都で初めて定着が確認されて以降、神奈川県、埼玉県、群馬県、千葉県といった関東地方を中心に生息域を広げてきました。近年ではその生息範囲はさらに拡大し、新潟県、栃木県、愛知県、長野県、静岡県、岐阜県、大阪府、京都府、広島県、兵庫県、愛媛県、佐賀県、宮崎県など、全国各地で繁殖個体が確認されています。

形態

全長は約40センチメートルほどで、比較的大きなインコです。体色は基本的に鮮やかな緑色をしていますが、品種改良により青色、黄色、白色といった多様な色変わり個体も存在します。特徴的なのは、成鳥の雄に見られる首元の模様です。喉から首にかけて幅広の黒い帯があり、首の後ろ側には細い桃色の帯が繋がっています。この首の輪状模様から、「ワカケホンセイインコ」という和名や、別名「ツキノワインコ」が付けられています。雌は雄のような明瞭な首の輪を持たないため、この模様が雌雄を区別する際の手がかりとなります。ただし、若い個体では雌雄ともに輪が不明瞭な場合があるため、この特徴だけで確実に判別することは難しい場合があります。嘴は大きく赤く、尾羽は非常に長いことも特徴の一つです。飼育環境下での寿命は長く、最長で約30年に達することもあります。

生態

森林やサバンナ、さらには樹木の多い市街地など、多様な環境に適応して生息しています。低地から標高2000メートルまでの範囲で見られます。食性は植物食が主で、植物の種子、花、果物、芽、穀物などを食べます。人の近くに生息する個体は、餌台に置かれた餌なども利用します。繁殖期は主に春で、樹木の洞（樹洞）を利用して営巣します。非繁殖期には群れで行動することが多く、大きな木や街路樹などに集団で集まって夜を過ごすねぐらを形成します。ワカケホンセイインコ特有の行動として、「ワカケダンス」と呼ばれる、まるで踊っているかのような仕草をすることが知られています。また、緊張や興奮した状態になると、黒目が小さくなり、白目が大きく見えることがあります。

外来種問題

日本を含む世界の多くの地域で、ペットとして飼育されていた個体が逃げ出し野生化し、外来種として問題視されています。特に日本では、1969年の東京都での初確認以降、急速に生息域を拡大しています。これらの野生化した個体は、在来の野鳥、特にシジュウカラやヤマガラのように樹洞を利用して営巣する種類の営巣場所を奪うなど、生態系への悪影響が懸念されています。また、電柱に営巣することで漏電事故の原因となったり、農作物を食害したりするといった被害も報告されています。さらに、鳥インフルエンザやオウム病といった病原体を媒介する可能性も指摘されており、人や家畜への影響も懸念されています。イギリスなどヨーロッパの一部地域でも同様に野生化個体が増加し、在来種への影響が問題となっています。

ペットとして

ワカケホンセイインコは、高い知能を持ち、人の言葉を覚える能力があることや、「ワカケダンス」のようなユニークな行動を見せることから、ペットとして人気があります。しかし、その神経質な性質から、見知らぬ人が不用意に手などを近づけると噛みつき、大怪我を負わせる危険性があります。飼育する際は、その性質を理解し、注意深く接する必要があります。また、非常に大きな鳴き声を出すため、飼育環境によっては騒音問題となる可能性もあります。そのため、飼育を検討する際には、近隣環境や防音対策などを十分に考慮することが重要です。

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