ワキアカヒドリ

ワキアカヒドリ

ワキアカヒドリ（学名：Mareca sibilatrix）は、鳥類カモ目カモ科に分類される水鳥の一種です。南アメリカ大陸を中心に分布し、英名ではChiloe Wigeonと呼ばれます。体側面の赤褐色の羽毛が和名の由来となっており、その名の通り特徴的な外見を持つカモ類です。

分類

本種はカモ科に属します。かつてはマガモ属（Anas）でしたが、遺伝子研究に基づき、近年はオカシヨガモなどと共にマガモ属（Mareca）に再分類されました。学名の種小名 sibilatrix はラテン語で「口笛を吹く者」を意味し、オスの特徴的な鳴き声に由来します。

形態

全長約45〜55cmの中型カモです。オスとメスで羽色に大きな差はありません（性的二型が少ない）。

頭部と首: 茶褐色または灰褐色。
頬: 明瞭な白い大きな斑点があります。
体側面（脇）: 和名の由来である鮮やかな赤褐色の羽毛が密生しています。
背中と腹部: 背中は灰色〜黒っぽい模様、腹部は白っぽい色です。
クチバシと脚: クチバシは青みがかった灰色で先端が黒く、脚は灰色です。

頬の白斑と脇の赤褐色が識別のポイントです。

生態

主に湖沼、湿地、河川、池などの淡水域に生息します。開けた水面と水辺の植生がある環境を好みます。

食性: 主に植物質（水草、種子など）を水面や水中で採餌します。
繁殖: 南半球の春〜夏（約9〜12月頃）が繁殖期です。水辺の茂みなどに巣を作ります。
卵: 6〜10個ほど産み、抱卵期間は約25〜28日。メスが主に抱卵します。
渡り: 基本的に留鳥ですが、生息地の状況により局地的な移動を行うことがあります。迷鳥として分布域外で記録されることもあります。
鳴き声: オスは高く澄んだ「ピューイ」という笛のような声を発します。メスは低い「クワックワッ」といった声です。
* 社会性: 通常は数羽から数十羽程度の小規模な群れで行動し、繁殖期はペアで過ごします。他種との混群も見られます。

分布

南アメリカ大陸の広範囲に分布します。主にチリ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル南部などの南部に生息しています。また、フォークランド諸島にも多数生息しています。淡水域や湿地が主な生息環境です。まれに迷鳥として本来の分布域から離れた場所で記録されます。

保全状況

個体数は比較的安定しており、IUCNレッドリストでは「軽度懸念（Least Concern）」に評価されています。しかし、湿地の破壊や環境汚染などにより、地域によっては生息数が影響を受けている場所もあります。

ワキアカヒドリは、その独特な外見と鳴き声、そして南米固有の分布を持つ魅力的なカモ類として知られています。

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