ワシントン・タイムズ (1894年創刊)

ワシントンD.C.に華開いた日刊紙『ワシントン・タイムズ』の興亡

1894年、アメリカ合衆国ワシントンD.C.で誕生した『ワシントン・タイムズ』は、華々しい歴史と、幾多の変遷を経て、その幕を閉じました。現在、同名の新聞が存在していますが、それとは全く別の新聞です。本稿では、かつて存在した『ワシントン・タイムズ』の物語を紐解きます。

創刊からハースト買収まで

この新聞の創設者は、連邦下院議員を務めた後、インディアナ州で楽器製造会社を経営していたチャールズ・G・コンでした。初代発行人には、のちに『ワシントン・ポスト』を創刊することになるスティルソン・ハッチンスが就任。その後、新聞配信会社の経営者であるフランク・A・マンジー、アーサー・ブリスベンとオーナーが交代していきます。

そして1917年、アメリカのメディア界を席巻した「新聞王」ウィリアム・ランドルフ・ハーストが『ワシントン・タイムズ』を買収。ハーストの傘下に入ったことで、新聞の勢力はさらに拡大していきました。

ライバル紙との合併と新たな展開

1922年、ハーストは『ワシントン・タイムズ』と同じワシントンD.C.を拠点とするライバル紙『ワシントン・ヘラルド』も買収します。これにより、ハーストはワシントンD.C.の新聞界で圧倒的な存在感を示すことになりました。

1923年には、『ワシントン・タイムズ』と『ワシントン・ヘラルド』は、フィリップ・M・ジュリアン設計による共同本社ビルである「ワシントン・タイムズ・アンド・ヘラルド・ビル」に移転。ライバル関係にあった両紙が同じビルを共有するようになったことは、メディア業界における大きな出来事でした。

両紙の編集長を兼任していたシシー・パターソンは、1939年にハーストから両紙を買収。そして『ワシントン・タイムズ』と『ワシントン・ヘラルド』を合併させ、『ワシントン・タイムズ＝ヘラルド』を創刊しました。

パターソンは1948年に亡くなるまで同紙の経営を続けました。その後、彼女のいとこであるロバート・R・マコーミックが新聞を継承しますが、1954年には『ワシントン・ポスト』のオーナーであるフィル・グラハムに売却され、『ワシントン・ポスト』に統合されることになりました。

『ワシントン・タイムズ』の遺産

『ワシントン・タイムズ』は、その歴史の中で、様々なオーナーや編集者によって形作られてきました。ハーストによる買収劇や、女性編集長パターソンによる合併など、興味深いエピソードも多く存在します。

1954年に『ワシントン・ポスト』に吸収された後、『ワシントン・タイムズ』という名前は歴史の彼方へと消えていきました。しかし、この新聞がアメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.のメディアシーンに与えた影響は、依然として無視できません。その歴史は、アメリカの新聞史において重要な一章を刻んでいると言えるでしょう。

参考資料

Roberts, Chalmers McGeagh (1977). The Washington Post: The First 100 Years*. Boston: Houghton Mifflin. ISBN 978-0-395-25854-5

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